【広報コラム】AI時代の企業ブランディング!NO.19 AIは情報をつなぐ。企業は社会とつながろう!

こんにちは。㈱電通PRコンサルティング 企業広報戦略研究所 部長 兼 上席研究員の増田勲です。 コラムを読んでいただきありがとうございます。
第16回から、「AI時代の企業ブランディング」というテーマで、企業が磨くべき魅力について考察してきました。
第17回では「人的魅力」を取り上げ、AIによって情報が均質化する時代だからこそ、企業の「人格」が重要になることをお話ししました。
そして第18回では「商品的魅力」に焦点を当て、AIが人々の好みを理解し、共感を創る時代だからこそ、期待を超えて人の心を動かす「感動」が求められるとお伝えしました。
今回は、「魅力度ブランディングモデル」の3つ目の魅力である「社会的魅力」について考えていきます。
なぜ、いま「社会的魅力」なのか?
企業広報戦略研究所では、2025年に「魅力度ブランディングモデル」をアップデートし、それまでの「財務的魅力」を「社会的魅力」へと変更しました。
その背景には、企業を取り巻く2つの大きな変化があります。一つ目は、企業が重視すべきステークホルダーの変化です。
かつての企業経営では、株主利益の最大化が重要視されてきました。しかし近年は、株主だけでなく、顧客、従業員、そしてその従業員の家族、取引先や、地域社会など、多様なステークホルダーへの価値提供を重視する「ステークホルダー資本主義」という考え方が広がっています。
実際に、当研究所が実施している「企業広報力調査」でも、広報・PR部門が重視するステークホルダーとして、「従業員とその家族」は2014年の53.7%から2024年には76.0%へ、「取引先」は60.8%から75.4%へ、「就活生・学生」は40.1%から72.0%へと大きく上昇しています。
二つ目は、非財務情報の重要性の高まりです。
企業の価値は、売上や利益といった財務情報だけでは測れません。人的資本や、環境への取り組み、社会課題への対応など、非財務情報が企業の将来価値を判断する重要な材料になっています。
つまり、企業は「どれだけ利益を生み出すか」だけでなく、「社会にどのような価値を生み出すか」も問われる時代になっているのです。
こうした変化を踏まえ、私たちは従来の「財務的魅力」を「社会的魅力」へと変更し、企業と社会との関係性をより重視するモデルへと進化させました。
「社会的魅力」とは?
当研究所では、「社会的魅力」を次のように定義しています。
社会的魅力――ダイバーシティ、イシュー対応など、企業を取り巻く社会やステークホルダーとの「つながり」から伝わる魅力。

例えば、地域社会の課題に向き合う企業。多様な人材が活躍できる環境をつくる企業。災害時に社会を支える企業。こうした活動を通じて、生活者はその企業に魅力を感じます。
従業員との関係、地域社会との関係、取引先との関係、投資家との関係など、企業を取り巻くさまざまなステークホルダーとの関係性そのものが、魅力の源泉になるのです。
企業が一方的に価値を提供するだけではなく、社会の期待や不安を受け止め、ともに課題を解決し、新たな価値を生み出していく。そうした双方向の関係こそが、社会的魅力の本質だと考えています。
企業の魅力、第1位は「イシュー対応」
では、生活者は企業のどのような活動に魅力を感じているのでしょうか。当研究所が2025年に生活者1万人を対象に実施した「魅力度ブランド調査」では、企業200社について、魅力を構成する24領域を分析しました。
その結果、24領域の中で最も高いスコアとなったのが、社会的魅力の『イシュー対応』(48.8%)でした。「安定・透明性」(48.6%)、「技術」(45.5%)を上回り、全24領域中の第1位となったのです。
イシューとは、社会が抱える課題や、社会的な関心事のことです。今回の調査では、「イシュー対応」を、「社会の発展や社会課題解決に貢献している」「生活に欠かせない商品・サービスを提供している」という2つの項目から評価しています。
注目したいのは、企業に求められているのが、単に社会課題を解決することだけではない点です。社会を支え、人々の暮らしに欠かせない存在であること。その企業が社会にとって「必要な存在」であることも、大きな魅力になっているのです。
企業がどれほど優れた技術や商品を持っていても、それだけで社会的魅力が生まれるわけではありません。その技術や商品が人々の役に立ち、社会に価値をもたらすことで、はじめて「社会に必要な企業」として認められていくのです。
つまり、企業の魅力は、企業の中だけで生まれるものではなく、社会との関係の中で育まれるもの。今回の調査結果は、その重要性を改めて示しているのではないでしょうか。
AIにはつくれない「コネ」の力
では、AI時代になると、なぜ「社会的魅力」がさらに重要になるのでしょうか。生成AIは、膨大な情報を瞬時に収集し、整理し、結びつけることができます。企業が抱える課題を分析し、解決策を提案することもできます。
しかし、「情報をつなぐ」ことと、「社会とつながる」ことは、同じではありません。ここで、少し身近な言葉で考えてみましょう。それは、「コネ」です。「コネ」と聞くと、「コネ入社」のように、縁故や人脈に頼るネガティブなイメージを持つ方もいるかもしれません。しかし、もともとは「コネクション(Connection)」、すなわち「つながり」を意味する言葉です。
困ったときに相談できる。何かに挑戦するときに協力してもらえる。相手のために、自ら進んで行動したくなる。そんな、人と人、人と企業の間に生まれる、目には見えない関係の力です。
そして、この「コネ」は、一方的に情報を発信するだけでは生まれません。相手の声に耳を傾け、期待に応え、ときには困難をともに乗り越える。そうした行動の積み重ねによって、少しずつ育まれていくものです。
AIは、膨大な情報の中から最適な相手を探し出すことはできます。しかし、その関係に自ら責任を持ち、相手とともに課題に向き合い、行動を積み重ねていく主体は、あくまで企業や人です。AIは「つながり」を見つけられても、「つながる力」の当事者にはなれない。そして、この目には見えない「コネ」こそが、企業と社会との関係を深め、企業の「社会的魅力」を育んでいくのです。
「つながり」を、企業の価値に変える
これまで企業ブランディングは、企業がどのようなイメージを発信するか、という視点で語られることが少なくありませんでした。しかし、AI時代には、企業が何を発信したかだけでなく、社会とどのような関係を築き、何を実現してきたのかが、ますます重要になります。
企業と社会との「つながり」を通じて、どれだけ相手の期待に応え、社会に新しい価値を生み出していけるか。AIは、企業と社会を結ぶ手段を進化させます。しかし、その関係に意味を与え、価値へと育てていくのは企業自身です。
第17回では、企業の「人格」。第18回では、人の心を動かす「感動」。そして今回の第19回では、社会と「つながる力」について考えてきました。この3つに共通するのは、AIが進化するほど、企業そのものの実態や行動が問われるということです。
企業の「人格」を磨き、人の心を動かす「感動」を商品・サービスを通じて届ける。そして、社会との「つながり」から新しい価値を生み出していく。それが、AI時代の企業ブランディングなのではないでしょうか。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。次回もどうぞご期待ください。
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※本コラムはELNET外部の筆者が執筆しています。
執筆者プロフィール

増田 勲
㈱電通PRコンサルティング 企業広報戦略研究所 部長 兼 上席研究員
広告代理店で約14年間、マーケティングコミュニケーション業務全般に携わる。2014年電通パブリックリレーションズ入社。ディレクション職として、飲料メーカー、外資系コーヒーチェーン、精密機器メーカー等を担当し、戦略シナリオの策定や商品・サービスのローンチ時期の戦略PRに従事。
現在は、企業広報戦略研究所で、「企業広報の発展」に寄与すべく、産学連携による調査研究・論文・ 学会発表等を実践。企業のブランディングや経営広報、KPIの設定、広報効果測定、新モデル開発等の業務を行う。経営管理学修士(MBA)。日本パブリックリレーションズ協会認定PRプランナー。
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