【広報コラム】パブリックリレーションズを経営に!NO.15「広報」は“経営機能”たり得るのか? ~企業経営者が語る、4つのギャップとは?~

目次
- 「経営者インタビュー」調査で示された「4つのギャップ」とは?
- 気になるギャップ① 戦略関与ギャップ
- 気になるギャップ② 成果基準ギャップ
- 広報が“経営機能”たり得るためには? ~社会・関係資本への注目~
- 執筆者プロフィール
- お役立ち資料のご案内
企業広報戦略研究所(電通PRコンサルティング内)、所長の阪井です。コラムを読んで頂きありがとうございます。
今号は前号に引き続き、日本広報学会が調査した「経営者インタビュー」結果報告シンポジウム(上智大学2026年3月開催)から、広報が“経営機能”たり得るための課題を考察してみたいと思います。
このプロジェクトにはメンバーとして、少しだけ私も関わらせて頂き、とても学びの多い場となりましたので皆様のお役に立つのではと思いご紹介させて頂きます。
「経営者インタビュー」で示された広報の「4つのギャップ」とは?
まず、この「経営者インタビュー」は、前号でも紹介した2024年の日本広報学会による企業調査がベースとなっています。その調査に回答された企業の経営者20名へ、広報の役割や課題についてインタビュー調査をした結果が3月のシンポジウムで発表されました。
参照元:日本広報学会、上場企業経営者20社インタビュー調査結果を公表(PR TIMES)
シンポジウム当日は、上智大学の国枝智樹先生から『経営者が描く広報の姿 「経営機能としての広報」をめぐる 期待・課題・対策とその構造』と題した発表が行われ、冒頭、インタビューにお答えいただいた経営者の声として、
「広報は経営そのものという位置づけであり社運を左右すると考えています」(K社)
「広報で一番重要な場面というのは危機管理の時だと思うんですね。(中略)一つ間違うと批判の的にされることもあるし、一つうまくいけば賞賛の対象にもなるわけですね」(M社)
という2社の広報に対する経営者の強い期待が紹介されました。
しかし、現実には4つの領域でギャップがあるとして課題が提示され、こちらのイラストにまとめられています。
❶戦略面:「戦略関与」ギャップ
広報が経営戦略の策定や経営の意思決定に十分に関与できていない。
❷組織面:「組織位置づけ」ギャップ
広報部門の役割や権限、担当範囲の位置づけや組織設計が、企業内で十分に整理されていない。
❸活動面:「ニュース化期待」ギャップ
広報活動がメディア露出を中心に理解され、ニュース化への期待と実務の現実(活動理解)の間にズレが生じている。
❹評価面:「成果基準」ギャップ
広報活動の成果をどのような基準で捉え評価するかについて、経営側と実務側の認識に差がある。
この4つのギャップのうち、筆者が特に気になった2つについて深堀をしてみたいと思います。
気になるギャップ① 戦略関与ギャップ
「(広報は)ある意味、経営の代弁者であり、あるときは経営者を、組織を守らないといけません。 本当に経営機能そのものだし、どちらかというと機能よりも、経営者に近いものもあるのかもしれません」(I社)
シンポジウムでは、上記のような経営者の広報戦略に対する高い期待の声が紹介されていました。
一方で「戦略策定時に広報が関与できず、戦略決定後の発信担当にとどまる」や「戦略決定後に発信を検討するため、メッセージが後付けになる」といった現実的な課題も同時に示されておりました。
特に私が気になった課題は「経営の内部論理で戦略が形成され、社会視点が十分に反映されない」といった指摘(ギャップ)でした。企業の価値は、経済価値と社会価値の二つでなりたっており、特にステークホルダーとの関係性は、社会視点を重視する現代社会において重要な無形資産とも考えられます。「社会視点が十分に反映されない」といった状況が行き過ぎた場合には、不正や事故などにまで及ぶ危険性もあるのではないでしょうか?
企業広報戦略研究所が隔年で実施している企業の広報力調査においても、「経営層と広報戦略を共有している 48.2%」「定期的に、社長・CEOと広報部門が情報交換する機会がある 48%」というように、半数以上の企業が、経営と広報の連動ができていない様子が浮かびあがります。
広報が“経営機能”たり得るためには、まずは「社会視点」を広報部門が捉え、それらを経営層と情報交換できる仕組み・体制を整えるところから始めてみてはいかがでしょうか?
調査結果の詳細:上場企業を対象とした「第6回企業広報力調査」結果
実際、シンポジウムでは具体的に取り組んでいる先進的な経営者の声も紹介されていました。
「社内の重要な発表事項になるような決議案件は、広報計画も載せた形で持ち込むようにしている。それは他社ではあまり聞かない。」
「ただ単に発信するだけではなく、自らもそこで企画して、その中に参画するというのが、広報の将来的な絵図なんです」
「広報はこれから経営のプロデューサーになっていく」
ぜひ、こうした取り組みを読者企業の皆様でもチャレンジしてみて頂けると良いかと思います。
気になるギャップ② 成果基準ギャップ
「成果基準ギャップ」の冒頭では、以下のような経営者の声が紹介されていました。
「広報のKPIを決めましょうという経営者が結構いるんですよね。KPIを決めると逆に難しくなるのがKPIですよね。 すぐに数字に落とし込むみたいな話になるじゃないですか。 (中略)広報は数字じゃなくて中身で評価すべきです。数字よりも何を伝えたのかといったことのほうが大事です」 (F社)
さらに、20名の経営者インタビューの結果、成果基準ギャップの「論点」が4つにまとめられて紹介されていました。
いずれも、情報発信(アウトプット)した結果に対する成果(アウトカム)への期待が経営者からは高いということを感じられたまとめでした。
アウトプットからアウトカムへ。まさに、今の時代の広報に求められている重要な視点です。定量的なKPIに落とし込むことを目的とするのではなく、経営課題の解決に貢献する成果基準を、経営者とどのように握るのか?・・・が求められているのだと考えます。
広報が“経営機能”たり得るためには? ~社会・関係資本への注目~
最後に、今回のコラムのタイトルにも使用している「広報が“経営機能”たりえるためには?」ですが、もっとも大切なのは、経営戦略と広報戦略をしっかりと連動させることだと考えます。
我々、企業広報戦略研究所が2025年の広報学会、研究発表全国大会で口頭発表させて頂いた資料から引用しますが、「経営戦略とリンクした広報戦略を立案している」と回答頂いた企業は4割程度にとどまっています。
これは、6割程度の企業が経営とリンクしていない広報戦略を立案している可能性があることを示唆しています。
広報を経営とより連動させたいと考えている企業の方は、まずは「社会価値」を高める広報戦略を検討してみてはいかがでしょうか?企業価値は経済価値と社会価値から成り立っている話は本稿前段で少し触れましたが、この社会価値は、非財務情報を中心に語られるケースが多く見受けられます。
来年、2027年度からサステナビリティなどの自然資本や、人的資本などの非財務情報の開示規制が強化される予定であり、現在各社が準備に追われています。この辺りの規制や他社動向は、報道データベースなどを活用して効率的に収集・共有していくことが重要です。
また自社にとって重要なKeyとなるステークホルダーとの関係性は、5つの非財務資本のひとつ「社会・関係資本」に区分されています。北米やアジア圏など特定エリアの顧客や地域住民であったり、重要な仕入れ先であったり、ビジネスパートナーであったり、自社の経営戦略において優先度の高いステークホルダーとのエンゲージメント(関係性)を深めることを、広報戦略として検討してみることが、広報が経営機能になり得るための大切な一歩になると考えます。
次号からは、~AI時代の企業ブランド「魅力度ブランディング」(仮題)~として、企業ブランディング活動について解説していきたいと思います。
ELNETのクリッピングサービスは新聞約100紙、雑誌約30誌、WEBニュース約1,000サイトからの収集した記事情報をお届けします。
次回もどうぞご期待ください。
※本コラムはELNET外部の筆者が執筆しています。
執筆者プロフィール

阪井 完二
企業広報戦略研究所(電通PRコンサルティング内) 所長
◎専門領域:コーポレートコミュニケーション、企業ブランド、リスクマネジメント、パブリックアフェアーズ、ESG/非財務情報
◎主な著書:「新・戦略思考の広報マネジメント」「戦略思考の魅力度ブランディング」「戦略思考のリスクマネジメント」「PR式経営 ~パブリックリレーションズで創る企業価値」 など
◎受賞/審査員等:2024日本PR大賞審査員、日本PR協会PRアワードグランプリ審査員、マーケティング学会最優秀論文賞(ベストペーパー賞)受賞など
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