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【ELspot+】広報を中心に、愛を叫ぶ。~社内の「伝えたい」を社会の「気になる」に翻訳するPRのつくり方~

【本日の流れ】

1:レクチャー:『社内の「伝えたい」を社会の「気になる」に翻訳するPRのつくり方~"ネタがない"は、治せる症状です~』
  ゲスト講師:面白法人カヤック(株式会社カヤック)グループ広報部
        広報部長 梶 陽子 氏
2:ワークショップ:カヤック流ブレスト実践ワークショップ

3:質疑応答

4:参加者の感想

5:講師からのメッセージ

【主旨・背景】

広報活動を展開する中で、多くの広報担当者が共通して直面する悩みが、「発信するためのネタがない」ということではないでしょうか。社内にある「伝えたい思い」を、いかにして社会やメディアが「気になる」ニュースへと翻訳し、共感されるコンテンツとして発信できるか――。この広報最大のテーマに対し、独自のクリエイティブとユニークな企業文化で数々の話題を生み出し続けているのが、鎌倉に本社をおく「面白法人カヤック」です。 

2026年9月のELspot+交流勉強会では、同社のグループ広報部を率いる梶陽子氏をお迎えし、“自社の「伝えたい」を社会の「気になる」に変える”企画思考法を学びました。
前半のレクチャーでは、同社が手がけた多彩な広報事例を紹介いただいた上で、広報を悩ませる「3大症候群」の処方箋として、同社の原動力である「ブレスト(ブレインストーミング)」を活用した企画創出ノウハウを伝授いただきました。後半のワークショップでは「カヤック流ブレスト」を実際に体験し、アイデア創出と当事者巻き込みの極意を学びました。

本レポートでは、当日の内容・様子をお届けします。

※第1回目(9/10回)は通常の対面形式(オフライン)で行いましたが、
 第2回目(9/16回)はELspot+初のオンライン形式で実施しました。


【本日の交流勉強会】

1: レクチャー「社内の『伝えたい』を社会の『気になる』に翻訳するPRのつくり方 ~"ネタがない"は、治せる症状です~」

ゲスト講師:面白法人カヤック(株式会社カヤック)グループ広報部 広報部長 梶 陽子 氏
https://www.kayac.com/


【Contents】

1)面白法人カヤックの企業理念と広報ミッション
2)「伝えたい」を「気になる」に翻訳するカヤック流・広報PRの実践事例
3)広報を悩ませる「3大症候群」と万能薬としての「ブレスト」
4)カヤック流ブレストの極意と広報のファシリテーション技術

【Summary】

1)面白法人カヤックの企業理念と広報ミッション

レクチャーでは、最初にカヤックの企業理念と広報部のミッションについて紹介されました。

Q:面白法人カヤックって、どんな会社?

<こんな会社>
・ 創業28年(1998年設立)、上場11年目(2005年上場)のインターネット企業
・ 主力事業は、「伝播性の高い広告制作」や「スマートフォンアプリ(ゲーム)開発」
・ グループ社員は約800人、90%の社員がクリエイター
・ ローカリズム経営にこだわる、地域に根ざした鎌倉の企業
・ 給料の一部をサイコロで決める「サイコロ給」や、個性を際立たせる「漫画名刺」など、ユニークな社内制度がある

<企業理念:「面白法人」に込めた思い>
① 面白がってはたらこう
② 面白いと言われよう
③ 世界を面白くしよう

 ● 「カヤックの企業理念は、まず、社員自身が『面白がって働く』ことが第一です。次に、面白がって作ったコンテンツに対して『それ面白いね』と言ってもらう、自分たちの存在自体も『面白いね』と言ってもらう。そして、それを通して、『世界を面白くしていく』ことが企業理念です」(梶氏)

グループ広報部のミッション

図1:グループ広報部のミッション

 ● 「私どもグループ広報部のミッションは、社員が面白がって生み出した『面白コンテンツ』を世の中のステークホルダーに面白く届けることです。突拍子もないコンテンツも多いので、グループ全体を巻き込みながら一緒に作成・発信し、話題化することを目指しています」(梶氏)

2)「伝えたい」を「気になる」に翻訳するカヤック流・広報PRの実践事例

続いて、グループ広報部が手がけてきた具体的な広報施策の舞台裏が披露されました。単なる話題作りではなく、社会の潮流と自社の強みを掛け合わせた発想のポイントについて解説されました。

事例①:出社を促す逆張りのメッセージ「NO密オフィス」

背景:コロナ禍の緊急事態宣言解除後、世の中全体がリモートワークへと傾倒する中、仲間同士での対面のブレストを重視するカヤックでは、3密を回避したオフィス改装を行った。
発想:「3密の回避(NO密)」と「対面で働く(濃密)」を掛け合わせたネーミングと文脈を作り出し、あえて世間の潮流と逆張りする「出社推進」の姿勢を発信した。
効果:逆張りのメッセージがマスコミに注目され、多くの取材を獲得することができた。その結果、「人と会うことを重視する」「仲間を大事にする」会社の姿勢を示すことができた。

図2:グループ広報部で担当した案件①:「NO密オフィス」


事例②:リモートネイティブ世代のインサイトを捉えた「キャンピングオフィス入社式」

背景:焚き火(LED)を囲みながら過ごせる「キャンピングオフィス」を新設。
発想:単なる「ユニークなオフィスの新設」ではインパクトが薄い。そこで、リモートネイティブ世代が「対面での雑談や仲間づくりを強く求めている」というデータを見つけ、ならば「入社式をキャンピングオフィスで行う」というアイデアを着想。
効果:「薪に書いたお題でブレストを行う」といったソフトも作り込み、仲間と自然に打ち解けられる時間を演出。新入社員の定着につながる話題として、多くのメディアで報道された。

図3:グループ広報部で担当した案件②:「キャンピングオフィス入社式」


事例③:ITエンジニア採用難の壁を破る「42.195km採用」

背景:ITエンジニアの採用難が続く中、フルマラソンを完走すれば採用試験の書類選考が免除される採用キャンペーンを実施。
発想:「ランニング記録を更新できる人はITエンジニアとしても成長意欲がある」との持論に基づき発想。8月の採用キャンペーン開始、10月のプロアスリートとの対談イベント、12月の湘南国際マラソンでの採用選考会と、「3つの取材の山場」を戦略的に設計し連続展開。
効果:テレビの情報番組や各種メディア、地元ラジオなどで報道され、マラソン大会での採用選考会は4年連続で実施中。

図4:グループ広報部で担当した案件③:「42.195km採用」


 ● 「広報活動によるメディア掲載や口コミが営業代わりとなって、新しいビジネス創出や新たな人材採用につながり、そこからさらに面白い実績が生まれます。この好循環をスムーズに回すことで企業のブランド価値を高め、事業拡大につなげていくことが、広報の役割だと思います」(梶氏)

3)広報を悩ませる「3大症候群」と万能薬としての「ブレスト」

多くのメディアに取り上げられるカヤック。しかし実際は、「広報の現場では、日々悩みが多いです」と言う梶氏。どこの会社の広報にもある悩みとして、次の3つの症状を挙げました。

【広報を悩ませる3大症候群】
1. 「灯台下暗し症候群」:
  「うちにはアピールできるネタがない」と現場が勝手に思い込み、広報に何も相談しない内に発表のタイミングを逃してしまう症状。B to B事業にありがちな現象。
2. 「蚊帳の外症候群」:
  現場で企画や内容がほぼ決まった後に、「広報さん、あとはよろしく」とメディア発信だけを丸投げされる症状。マーケティングが強い会社でよく起こる現象。
3. 「独りよがり症候群」:
  現場の熱量や思い入れが先行し、「これ、絶対にバズるから!」と世間の文脈を無視した企画が広報に持ち込まれる症状。クリエイターの多い企業でよくある現象。

【万能薬としての「ブレスト」】
「この3大症候群を根本から治療する万能薬こそが、ブレスト(ブレインストーミング)です」と梶氏は言います。

<ブレストとは>

・ みんなでアイデアを出すことで、化学反応を起こし、一人では出せないアイデアをたくさん出すこと。

<ブレストがもたらす3つの効能>

・ 効能① 「掘る」:企画の解像度を上げる
・ 効能② 「広げる」:ターゲットや切り口を拡大する
・ 効能③ 「加える」:社会課題や時事性といった文脈を加味する

図5:3大症候群に効く万能薬


 ●「じつは先ほどご紹介した3つの事例も、最初は3大症候群でした。たとえば、『キャンピングオフィス入社式』の場合、最初は現場から『新しいオフィスを導入したからPRして』と広報に降りてきたんです(蚊帳の外症候群)。でも、それだけではニュースになりません。現場とのブレストを重ねる中で、①『目線が低くなることで本音の雑談が生まれる』といった効果を掘り下げ、②『リモートネイティブ世代は意外と雑談を求めている』といったデータにより視点を広げ、③最終的に『入社式はマスコミの注目が集まる』という社会的文脈を加えました」(梶氏)

4)カヤック流ブレストの極意と広報のファシリテーション技術

レクチャーの最後に、広報がファシリテーターとなり現場メンバーとブレストを行う上での実践的なマインドセットとテクニックを伝授いただきました。

ブレストの大原則:ブレストは発散の場

ポイント① 「質より量」:最初から完成度の高いアイデアを狙わず、くだらない思いつきでも圧倒的な数を出す。質は量の積み重ねからしか生まれない。
ポイント② 「人のアイデアに乗っかる」:他人の発言を否定せず、連想ゲームのように乗っかって展開させる。
ポイント③ 「空気を作る」(心理的安全性の確保):否定的な言葉は絶対に使わず、どんな発言にも拍手と肯定のリアクションを返す。

広報パーソンが担うファシリテーターの役割

図6:アイデアを一つでも多く出すためのファシリテーション技術


 ●「『ネタがない』『蚊帳の外に置かれている』『独りよがりの企画が上がってきた』という時は、広報だけで悩まず、現場の当事者を巻き込んで一緒にブレストをしてみてください。広報がファシリテーターとなって問いを投げかけることで、仲間意識や協力関係が生まれ、思いもよらない広報のネタが生まれてきます」(梶氏)

2:ワークショップ「カヤック流ブレスト実践ワークショップ」

レクチャーに続き、グループに分かれ、カヤックで実際に行われている「ブレスト」を体感するワークショップを実施しました。


◆STEP1:練習ワーク(2分間×2回)
お題:「昨日見た夢」
・カヤックオリジナルの「ブレストカード」(多様なイラストが描かれたカード)を使用。
・ルール:山札からカードを2枚めくり、そこに描かれた絵柄から連想して、「昨日見た架空の夢」を3秒以内に話す。チームの他メンバーは即座に拍手し、「いいね!」と全力で肯定リアクションを送る。
・1回目終了後、たくさんのアイデアを出すコツを共有して2回目を実施。テンポと発言数が劇的に向上し、会場全体の心理的ハードルが一気に打ち解けました。

◆STEP2:本番ワーク(20分間)
お題:「自社の周年記念でメディア露出を獲得するために、社長にやってもらいたいアイデア」
実現可能性や社内のしがらみは一旦度外視し、「社長×周年」という切り口でメディアが飛びつく突飛なアイデアをチーム全員で出し合いました。

図7:カヤック流ブレスト実践ワークショップ


▶アイデア発表:
・2つのワーク終了後、各グループからワークで出たアイデアを発表・共有しました。

本日の処方箋:

図8:広報は“受け取る人”から“つくる人”へ


●「広報が単なる『受け取る人』から『事業部と一緒に企画をつくる人』へと変わっていくことで、会社全体を面白くしていくことができます。ぜひブレストを活用して、『広報を中心に、愛を叫んで』いただきたいと思います」(梶氏)

《★参考書籍:面白法人カヤック著 『失言会議~チームで最高のアイデアを生み出す方法~』》
https://www.subarusya.jp/book/b667373.html
※発散から収束まで、カヤック流ブレストの極意とノウハウが詰まっている一冊です。


3:質疑応答

Q1:ブレストで出たたくさんのアイデアを、どう絞り込めばいいのでしょうか。

A1:「ブレストで出た突飛なアイデアが、そのまま具体的な広報コンテンツになることは稀です。重要なのは、アイデアの『エッセンス』を拾い上げることです。たとえば、アイデアを出している最中に、参加者がドッと盛り上がる瞬間があります。その『人が本能的に“面白い”と感じた熱量や空気感』こそが人やメディアを惹きつけるポイントです。そこに広報なりの視点で『社会的な文脈』や『報道のタイミング』を掛け合わせて具体化していきます」(梶氏)


Q2:ブレストで出たアイデアを社内で実行可能な施策に持っていくためのコツを教えてください。

A2:「それは、実行に関わる関係者・決裁者をブレストの場に巻き込んでおくことです。後から承認をもらいに行くと、どうしてもリスクや前例のなさを指摘されて止まってしまいます。しかし、最初から現場の関係者をブレストに入れて一緒にアイデアを出してもらうと、その人自身が企画の『生みの親(当事者)』になります。当事者になった人が後から批判することは難しく、『なんとか実現させよう』と一緒に汗をかいてくれる最強の味方に変わります」(梶氏)


Q3:社内ではよく「ディスカッションしよう」と言うのですが、「ディスカッション」と「ブレスト」の違いはありますか。

A3:「キャッチボールに例えれば、『ディスカッション』は相手のボールを正確に受け止め、相手の胸元に的確に投げ返すキャッチボールです。論理的で、ある程度身構える必要があります。それに対して『ブレスト』は、どこにボールを投げても良いキャッチボールです。後ろや足元に投げても、誰かがそれを拾って面白がればOKです。意思決定するには選択肢が必要ですので、まずはブレストで選択肢を思い切り広げ、その後にディスカッションで絞り込んでいくという使い分けが大事だと思います」(梶氏)


4:参加者の感想

交流勉強会の参加者から、次のような感想がありました。

  • ブレストのメリットと楽しさを体感することができました。当事者意識(自分事化)を高めるツールとして、現場とのコミュニケーションに活用したいと思います。
  • 「広報を悩ませる3大症候群」は、まさにその通りだと思いました。日頃の悩みの原因と解決の処方箋を学べて、とても有意義な時間でした。
  • 最近、チーム内でのコミュニケーションが不足していると感じていたので、まずは広報チーム内で実践してみようと思います。
  • ワークショップでのブレストの実践を通して、他社広報の方との距離が近くなりました。初対面の人との親近感を高めるツールとしても有効だと思いました。


5:講師からのメッセージ

「アイデアの多い人は深刻にならない」。ある詩人の言葉です。広報ネタがないと悩む前に、実現不可能でもいいのでブレストでアイデアを量産してみましょう。ブレストをすると、AIでは得られない他人の脳みそを借りられて、かつ、心強い味方にもなってくれるはず。『失言会議』ご購入で弊社社員との30分ブレスト体験も可能です! 


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