著作権Q&A
記事の危険な利用方法
File 01 電子掲示板の誘惑
「輸入食品の原料に無許可添加物」朝刊の週刊誌広告に、目立つ見出しが躍っている。「うちが扱ったやつね。こりゃ苦情殺到だわ」。月並商事の広報課主任・飯江留美子(29)は思わず舌打ちした。
File 02 許されません 22部
「課長、我が社の切り抜きは新聞社と契約してあるんですよね」「おお、大丈夫だ。確か10年前に当時の課長が新聞社に電話して『切り抜きしてもいいか』と問い合わせた。OKという返事だったと聞いたぞ」「じゃあ安心ですね」。ところが、10年の間に、課長も知らない「落とし穴」があいていたのだった。
File 03 うまい話にはエアポケット
広報課で待つ飯江に、バイク便で切り抜きの原紙とコピーが届いた。「うわあ、助かる。今までの2時間作業がなくなって、新聞社に払っていた許諾料もいらなくなるなんて」。だが、「うまい話」には、やっぱり裏があった。
File04 ようやく「要約」できたのに
課長の指示で、サイトに載せるため細部の調整をすることになった。出典として「キジサーチより引用」の文言も入れた。ところが、飯江の考えていた「要約」「引用」には、思ってもいなかった問題点が潜んでいた。
File 05 検討過程の落とし穴
A3用紙の左右に二つの記事のコピーを並べ、いいと思う方に○をつける。そんな投票用紙を飯江が作った。東京本社の社員約1200人分をコピーして各部署へ配布した。TwitterやFacebookでも、何人もの社員がこの話題を投稿した。投票結果は、最初の提案の旅行雑誌が僅差で選ばれた。「いい仕事できたわ」。満足そうな飯江に、大きなカゲが忍び寄っていた。
File 06「保護期間70年」ああ勘違い
「著作権の保護期間は発表から70年ですから、それを過ぎているものはだれでも自由に使えます。確かに御社の記事と写真を使わせていただきましたが、出典の記載がなくても問題ないと思います」。 2日後に、全国紙の知財部からメールが届いた。記事の方は著作者人格権により出典の表示を求めること、写真の方は著作権を有する写真家が存命であり複製許諾が望ましいこと、などが記され「不当な方法での利用には法的手段が用いられることがあります」と結ばれていた。