【広報コラム】AI時代の企業ブランディング!NO.16 ブランドはイメージ戦略だけでは創れない?〜魅力度ブランディング〜

目次
- AI時代、ブランドを取り巻くルールが変わった
- ブランドは「イメージ」だけでなく「ファクト」で創られる
- 「ファクト」が伝わることで、企業の魅力は形成される
- AI時代に企業が磨くべきは「人的魅力」
- AIがブランドの実像を映し出す
- 執筆者プロフィール
- サービス資料のご案内
こんにちは。(株)電通PRコンサルティング企業広報戦略研究所の上席研究員、増田勲です。コラムを読んでいただきありがとうございます。
これまで、本連載では、『パブリックリレーションズを経営に!』というテーマで、企業価値向上につながるPR・広報活動について考えてきました。
今号からは新たに、「AI時代の企業ブランディング」をテーマに、生成AIの普及によって企業ブランドのあり方がどのように変わるのか、そして企業は何を磨き、何を伝えていくべきなのかを考察してまいります。
その第1回となる今回のタイトルは、「ブランドはイメージ戦略だけでは創れない?」です。
AI時代、ブランドを取り巻くルールが変わった
ここ数年で、生成AIは私たちの生活や仕事に急速に浸透しました。
以前は、文章作成や画像生成など「業務効率化ツール」として語られることが多かったAIですが、現在では、調べものをしたり、企業を比較したり、商品を選んだりと、人々の意思決定そのものを支える存在へと進化しています。
例えば、「働きやすい会社は?」「環境問題に積極的な企業は?」「安心して取引できる会社は?」とAIに尋ねれば、AIは企業ホームページだけでなく、ニュース記事、SNS、社員の投稿、口コミサイト、統合報告書、行政資料など、世の中に存在するさまざまな情報を横断的に参照し、その企業像を整理して提示します。
つまり、AIは企業が発信した情報だけではなく、社会に存在するあらゆるファクトや評価をもとに企業を理解しようとしているのです。
この変化は、企業ブランディングに大きな転換をもたらします。これまでブランドは、広告やデザイン、キャッチコピーなどによって「イメージ」を形成する側面が大きくありました。しかしAI時代には、ブランドは企業の「実態(ファクト)」そのものから形成される時代へと変わり始めています。
ブランドは「イメージ」だけでなく「ファクト」で創られる
近年では、SNSやnote、転職サイトの口コミ、社員の発信、さらには内部告発などを通じて、企業の実態が社会へ自然と伝わるようになりました。どれほど美しいブランドメッセージを掲げても、実際の企業活動が伴っていなければ、そのギャップはすぐに見抜かれてしまいます。つまり、“隠したくても隠しきれない。”そんな時代になったのです。
だからこそ、ブランドづくりの発想も変えなければなりません。ブランドとは、良いイメージを演出することではありません。魅力ある「ファクト」を積み重ね、その事実が社会へ正しく伝わること。そこから初めてブランドは形成されます。言い換えれば、ブランドは「つくるもの」ではなく、「にじみ出るもの」へと変わりつつあるのです。これは、PRの役割にも大きな変化をもたらします。
従来のように「情報を発信すること」が目的ではなく、企業の魅力となるファクトそのものを生み出し、それを社会へ伝えていくことが、これからのPRに求められる役割なのです。
「ファクト」が伝わることで、企業の魅力は形成される
では、人は企業のどのようなファクトに魅力を感じているのでしょうか。
企業広報戦略研究所では、この問いに答えるため、「魅力度ブランディングモデル」を開発し研究を続けています。このモデルでは、生活者や企業経営者、政府・行政など、それぞれ異なるステークホルダーの視点から企業に求められる要素を分析し、「企業の魅力」を構造化しています。
近年では、生成AI活用やPBR改革(株価を意識した経営改革)、DE&I(多様性を生かした組織づくり)、企業不祥事への意識の高まりなどの、様々な環境変化を踏まえて、モデルもVer.3へとアップデートしました。AI時代の企業ブランドをより正確に捉えるため、モデルも進化を続けています。
モデルの基本的な考え方はシンプルです。企業には数多くの活動があります。技術開発への投資、社員教育、社会課題への対応、ガバナンス改革、商品・サービスの品質向上など、それら一つひとつが「ファクト」です。そして、その「ファクト」が社会へ伝わることで、企業の魅力が形成されていきます。つまり、ブランドとは、「ファクト」が積み重なり、「魅力」として認識された結果なのです。
だからこそ、ブランド戦略とは広告戦略だけのことではありません。経営そのものがブランド戦略になる時代へと移り変わっているのです。「魅力度ブランディングモデル」では、企業の「魅力」を、大きく3つの要素に分類しています。そして、それぞれの魅力要素を8領域ずつ、合計24の領域に細分化しています。
3つの要素の定義は以下の通りです。
・人的魅力
パーパス・ビジョン、インテグリティなど、法人として醸し出す「人格」や、経営者のリーダーシップや技術者などの「人」から伝わる魅力
・社会的魅力
ダイバーシティ、イシュー対応など、企業を取り巻く社会やステークホルダーとの「つながり」から伝わる魅力
・商品的魅力
感動・共感・独創・革新性など、商品・サービスを通じて、企業が「提供する価値」から伝わる魅力
AI時代に企業が磨くべきは「人的魅力」
では、企業はどのような魅力を磨くべきなのでしょうか。企業広報戦略研究所が2025年に実施した「魅力度ブランド調査」では、生活者が企業に感じる魅力を構成する要素を分析した結果、「人的魅力」が37.1%と最も高く、「商品的魅力」(33.4%)、「社会的魅力」(29.5%)を上回りました。
※調査結果の詳細:生活者1万人を対象とした「第10回 魅力度ブランド調査」結果
さらに魅力領域ランキングでは、「イシュー対応」が1位、「安定・透明性」が2位、「技術」が3位、「フロンティアスピリット」が5位となり、企業そのものの姿勢や人から伝わる価値が高く評価されていることが分かりました。
興味深いのは、生活者は単に「良い商品・サービス」を見ているのではなく、「どんな会社なのか」を見ているということです。
・誠実に経営している会社なのか?
・高い技術を持っている会社なのか?
・社会課題に真剣に向き合っている会社なのか?
・社員が誇りを持って働いている会社なのか?
こうした企業の姿勢や価値観が、企業ブランドを大きく左右する時代になっています。AIが進化すればするほど、商品スペックや価格の比較は容易になります。だからこそ最後に選ばれる理由になるのは、企業そのものの魅力なのです。
AIがブランドの実像を映し出す
生成AIは、広告コピーを書くことも、ブランドムービーを制作することもできます。しかし、AIが参照するのは、企業が社会に積み重ねてきた無数の「ファクト」です。つまり、AIはブランドを創るのではなく、ブランドの実像を映し出す“鏡”のような存在だと言えるでしょう。
だからこそ、AI時代の企業ブランディングに求められるのは、イメージを飾ることではありません。企業の実態や姿勢、社会への向き合い方といった「ファクト」を磨き、その魅力を社会へ伝えていくことです。ブランドは広告やイメージだけでは創れません。
ブランドとは、企業の日々の活動の積み重ねが社会に伝わり、評価されることで育まれるもの。それこそが、AI時代に求められる企業ブランディングの本質なのではないでしょうか。
次回は、AI時代に企業が磨くべき「人的魅力」について深掘りしながら、「AI時代の企業ブランディング」についてさらに考察を進めていきます。次回もどうぞ、ご期待ください。
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次回もどうぞご期待ください。
※本コラムはELNET外部の筆者が執筆しています。
執筆者プロフィール

増田 勲
企業広報戦略研究所(電通PRコンサルティング内) 部長
広告代理店で約14年間、マーケティングコミュニケーション業務全般に携わる。2014年電通パブリックリレーションズ入社。ディレクション職として、飲料メーカー、外資系コーヒーチェーン、精密機器メーカー等を担当し、戦略シナリオの策定や商品・サービスのローンチ時期の戦略PRに従事。
現在は、企業広報戦略研究所で、「企業広報の発展」に寄与すべく、産学連携による調査研究・論文・学会発表等を実践。企業のブランディングや経営広報、KPIの設定、広報効果測定、新モデル開発等の業務を行う。経営管理学修士(MBA)。日本パブリックリレーションズ協会認定PRプランナー。
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