【営業コラム】NO.4 インサイドセールスのマネジメントは「分業」から「AIとの協業」へ 〜成果を出し続けるチームを、いまの潮流でどう再設計するか〜

目次
こんにちは。株式会社Goofy代表の八木です。
前回(NO.3)のコラムでは、「営業組織は優秀な個人ではなく、強いチームで勝つ」というテーマで、成果を出し続けるチームの本質は「再現性」にあるとお伝えしました。課題を見極めて目標を揃え、安全な対話の場をつくって強みを活かし、情報を学びに変えて行動の再現性を高める。この「学習のサイクル」を回し続けることこそが、変化の激しい時代に安定して成果を出す組織をつくる近道であるという内容でした。
今回はその続編として、この「学習のサイクル」を最前線で担うインサイドセールスに焦点を絞り、そのマネジメントを掘り下げたいと思います。
インサイドセールス(内勤営業)は、コロナ禍で対面商談が難しくなったことを追い風に一気に普及しました。しかし、当時の「非対面で商談機会を作る部隊」というシンプルな役割は、いまや大きく姿を変えています。生成AIや自律型のAIエージェントの登場によって、インサイドセールスに求められる仕事も、それをマネジメントする側の視点も、根本から見直しが必要な局面に入っているのです。前回お伝えした「再現性のあるチーム」を、これからの潮流のなかでどう再設計していくか。本稿では、その具体像を2026年時点の視点で整理してみたいと思います。
インサイドセールスマネジメントの役割は「管理」から「設計」へ
かつてのインサイドセールスマネージャーの仕事といえば、チームの架電数や商談数を追いかけ、目標に届いているかを管理することが中心でした。もちろん進捗管理は今も重要ですが、それだけでは十分とは言えなくなっています。
背景にあるのは、「速さ」がもはや差別化要因ではなくなったという現実です。問い合わせに何分で反応できるかというスピード競争は、AIによる自動応答や日程調整の自動化によって、人が頑張る領域ではなくなりつつあります。実際、業界の調査では架電の接続率は年々低下しており、「かければつながる」という前提そのものが崩れてきています。
そうなると、マネージャーに求められるのは「メンバーをどれだけ速く動かすか」ではなく、「どのタイミングで、どのチャネルで、どんな文脈で顧客に接点を持つかを設計できるか」です。マネージャーの役割は、管理者から営業プロセスの設計者へと移っていると言えるでしょう。
人材育成は「作業の教え込み」ではなく「対話の質」を高める方向へ
インサイドセールスの成否は、メンバーの育成に大きく左右されます。ここは今も昔も変わりません。ただし、育てるべきスキルの中身は変わりました。
従来はトークスクリプトの習得やリスト作成、リサーチといった作業の習熟に多くの時間が割かれていました。しかし、こうした定型業務の多くは、生成AIが下書きを一瞬で用意してくれる時代になっています。企業リサーチも、AIに対象企業のIR資料やプレスリリースを渡せば、想定課題やアプローチの切り口まで数分で整理できます。
だからこそ、人が磨くべきは「AIが作った土台をどう使いこなし、顧客との対話をどれだけ質の高いものにできるか」という部分に移っています。育成方針も、達成可能な目標設定(SMARTの法則など)やデータに基づく個別フィードバックといった基本は押さえつつ、AIを相棒として活用する前提でロールプレイや商談設計のトレーニングを組み立てることが、これからのマネジメントには欠かせません。
目標管理は「PDCA」だけでなく「学習し続ける仕組み」として捉える
商談数や売上目標の管理には、今もPDCA(計画・実行・評価・改善)のような改善サイクルが有効です。同じ失敗を繰り返さず、仕事の質を上げていく基本動作として、これは色あせません。
一方で、AIによって通話音声の文字起こしや要約、CRM/SFAへの入力までが自動化されるようになったことで、評価(Check)に使えるデータの質と量は飛躍的に高まっています。以前は担当者の記憶や主観に頼りがちだった振り返りが、客観的なデータに基づいて行えるようになったのです。
マネージャーの役割は、こうしたデータを「管理のための数字」で終わらせず、「なぜ勝てたか・なぜ負けたか」という実践知に変え、チーム全体で共有できる形にすることです。個人の中に閉じていた勘やコツを、組織の資産として循環させる。PDCAを回すこと自体よりも、そのサイクルを通じてチームが学習し続ける仕組みをつくることに、マネジメントの重心が移っていると感じています。
他部門との連携は「対立の回避」から「データの共通言語化」へ
インサイドセールスは、マーケティングとフィールドセールスの中間に位置します。マーケティングが生み出した見込み客をインサイドセールスが商談機会に育て、それをフィールドセールスが受注へとつなげる。この連鎖がうまく回るかどうかは、部門間の連携にかかっています。
以前はこの連携を「対立を起こさないための努力」として語ることが多かったのですが、いまはもう一歩踏み込んで考える必要があります。鍵となるのは、部門をまたいで同じデータを同じ定義で見られる状態をつくることです。
顧客がどの資料を見ているか、どんな行動シグナルを出しているかといった情報を各部門が共有できれば、「価格ページを繰り返し見ているから予算の相談に乗ろう」といった、打てば響くアプローチが可能になります。また、顧客に関するニュースや業界動向といった外部情報も、営業活動における重要なシグナルです。Salesforceをご利用の場合は、2026年8月以降に販売予定のELNET for Salesforceを導入することで、顧客に関連した新聞記事を自動で検索・表示し、顧客や業界の最新ニュースをSalesforce上で共有することが可能になります。
SFA/CRMは単なる管理ツールではなく、こうした部門横断の「共通言語」として機能させてこそ意味を持ちます。連携とは、仲良くすることではなく、同じ地図を見ながら動けるようにすることなのです。
ミッションとKPIは「行動の指示」ではなく「判断基準」を揃えるもの
マネジメントの出発点として、ミッションを明確に示し、KPIを設定することの重要性は変わりません。アポイント数、商談化率、案件数といった中間指標は、KGI(組織目標)への進捗を測るうえで今も有効です。
ただし、AIが定型業務を担うようになった今、「架電数」や「メール送信数」といった活動量のKPIだけを追いかけることには限界があります。量を増やすこと自体はAIが得意とする領域になったからです。
これからのKPI設計で意識したいのは、数字を「ノルマ」ではなく「判断基準」として機能させることです。案件数を追うのか、商談の質を高めるのか、LTV(顧客生涯価値)を最大化するのか。目指す勝ち筋がメンバーに腹落ちしていれば、AIをどう使い、自分がどこに時間を使うべきかの判断が自然と揃っていきます。指標は人を縛るためではなく、チームの動きを揃えるために存在するのです。
属人化対策は「マニュアル整備」から「プロセスとデータの標準化」へ
「あの人がいないと案件が回らない」という属人化は、インサイドセールスでも長らく課題であり続けてきました。担当者の急な退職や不在で業務が止まってしまう。その原因は個人ではなく、その人に依存しなければ回らないプロセス設計にあります。
従来はこの対策として「詳細なマニュアルを整備する」ことが推奨されてきました。それも大切ですが、より本質的なのは、顧客情報や案件情報が、誰が見ても同じように理解できる形でツール上に蓄積されている状態をつくることです。
さらに近年は、AIが通話内容を自動で要約し、次のアクションまで整理してCRMに残してくれるようになりました。これは属人化対策として大きな意味を持ちます。担当者の頭の中にしかなかった情報が、自動的に組織の共有資産になっていくからです。属人化の解消とは、個人の職人技を否定することではなく、誰が担当しても一定の成果を出せる仕組みへと変えていくこと。それが結果として、若手の早期戦力化にもつながります。
ツールは「導入するもの」から「運用設計するもの」、そして「協業する相手」へ
SFA/CRM、MA、Web商談ツール。インサイドセールスを支えるツールは、この数年で当たり前に整備されるようになりました。もはや「導入しているかどうか」で差がつく時代ではありません。
2026年時点で勝負を分けるのは、「どう運用設計されているか」、そして「AIをどこまで営業プロセスに組み込めているか」です。フェーズごとの定義は揃っているか、入力項目は現場の負担にならず分析に役立つ形になっているか。こうした運用の作り込みが、データドリブンな意思決定の土台になります。
そしていま起きている最も大きな変化は、AIが「人の作業を少し楽にするアシスタント」から、「営業プロセスの一部を自律的に回すプレイヤー」へと進化していることです。リードスコアリング、パーソナライズされたメールの自動生成、24時間対応のロールプレイ相手、通話の自動要約とCRM入力。これらはすでに現場で使われ始めています。
だからこそマネージャーに問われるのは、AIに任せる業務と人が担うべき業務をどう切り分け、両者をどう協業させるかという設計です。AIが商談機会の獲得と初期対応を担い、人はより複雑な合意形成や関係構築に集中する。この分業ならぬ「協業」の体制をどう組み立てるかが、これからのインサイドセールスマネジメントの中核テーマになると私は考えています。
まとめ:AI時代のインサイドセールスは「人にしかできないこと」に集中する
インサイドセールスのマネジメントは、この数年で確実に変わりました。整理すると、次のような方向へのシフトが起きています。
● 速さの競争から、接点の「文脈設計」へ
● 作業の教え込みから、対話の質を高める育成へ
● 数字の管理から、学習し続ける仕組みづくりへ
● ツールの導入から、AIとの協業体制の設計へ
「AIに仕事を奪われるのではないか」という不安の声も耳にします。しかし、現場で支援を続けてきた実感として、生成AIはインサイドセールス担当者の競争相手ではなく、最強の相棒になり得る存在です。定型業務をAIに委ね、人は顧客との対話や課題発見という、人にしかできない価値創出に集中する。その役割分担を丁寧に設計できるかどうかが、これからの営業組織の強さを決めていきます。
個人の頑張りや気合いに依存するのではなく、AIも含めたチーム全体で勝つための仕組みをつくること。前回お伝えした「再現性のある学習するチーム」を、AIという新しい相棒と共にもう一段高いレベルへ引き上げていくこと。それが変化の激しい時代にあって、安定して成果を出し続けるインサイドセールス組織をつくる近道だと、私は確信しています。
Salesforce上に、取引先に関連する新聞記事を自動で検索・表示します。
次回以降のコラムも、ぜひご期待ください。
※本コラムはELNET外部の筆者が執筆しています。
執筆者プロフィール

八木 光(ヤギ ヒカル)
株式会社Goofy 代表取締役
立教大学卒業後、人材業界(Recruiteグループ、マイナビグループ)でキャリアをスタート。その後、経営コンサルティングや事業承継支援を経験したのちに、2021年に株式会社Goofyに取締役としてジョイン。2024年にはリブコンサルティンググループ(東証グロース上場)へ参画し、PMI業務に従事。GoofyではSFAコンサルティング事業/営業コンサルティング事業を立ち上げを行い、述べ200社以上の企業の営業組織設計/営業DX支援を行っている。2026年1月に同社代表へ就任。現在は「本当に成果の出るシステム/組織改善支援」を志し、自身も現場での顧客支援に奔走している。
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