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【広報コラム】パブリックリレーションズを経営に!NO.14「広報」は“経営機能”たり得るのか? ~日本広報学会調査から見る3大課題~

(株)電通PRコンサルティング 企業広報戦略研究所、所長の阪井です。コラムを読んで頂きありがとうございます。
私も所属し、日々勉強をさせて頂いている日本広報学会が、2023年6月に広報の定義を発表し、様々な調査プロジェクトを実施しています。
今号から2回にわたってこのプロジェクトを起点に「広報」の将来について考えてみたいと思います。

新たに策定された広報学会による広報の定義と調査結果

「組織や個人が、目的達成や課題解決のために、多様なステークホルダーとの双方向コミュニケーションによって、社会的に望ましい関係を構築・維持する経営機能である」
参照元:広報概念の定義|日本広報学会

この広報の定義文の発表の直後から「経営機能である」とした点について学会関係者を中心に多くの賛意が示されていました。

さらにこの定義文について企業経営者がどのように受け止めるのかの調査を広報学会が実施し2025年に、その結果を発表しています。そのポイントがこちらです。

参照元:広報の経営機能に対する経営者の意識と現状の課題|日本広報学会

学会が定めた定義に対する経営者の意見として「とても賛同する」が32.9%、「賛同する」が62.3%で、合計95.2%という、非常に高い支持が示されました。

こうした結果に対して調査を主導した上智大学の国枝智樹准教授は、企業広報戦略研究所の書籍「PR式経営」の中のインタビューで以下のようにご説明されています。

「私たちが意識したのは、むしろ時代の変化に左右されない定義づくりでした」
「学会の定義では、広報を経営機能と位置付けていますが、この点についても、多くの経営者にとって違和感のない捉え方だったのではないかと思います」

新たな定義文が企業側から見ても納得感のある定義であることが証明されたとも言える調査結果となりました。

しかし、期待と現実のギャップも浮き彫りに

一方、企業経営者に対して「広報」の主要機能についての「期待」と「現実」についても尋ねており、課題も見えてきています。


期待と現実のギャップでもっとも差が開いたのが「適正な株価の形成」で、「期待」が88%に対して「現実」は39.4%と期待値の半分以下のスコアに留まり、その差は48.6ptと最も大きな結果となりました。

経営者にとって市場からの評価である株価は、現在の経営方針・体制をも左右する極めて重要なファクターであることは間違いないでしょう。しかしながらその期待に、広報機能は十分に応えきれていない様子がこのデータからはうかがえます。

2023年に東京証券取引所などを擁する日本取引所グループが「PBR革命」と銘を打ち、全上場企業に対し資本コストや株価を意識する経営を要請して以来、多くの企業が「適正な株価の形成」に向けて取り組みを強化してきています。

特にのべ8000万人を超える個人投資家への対応は、これまの特定少数の専門家である機関投資家への対応とは趣が異なり、マスコミュニケーションの要素が重要となってきています。そのため、従来のIR部門とPR/広報機能との連携・融合の重要性が増してきているのではないでしょうか?

企業広報戦略研究所が定期的に上場企業の広報活動実態を調査している結果においても「株主・投資家の要望・不満を踏まえたPR/広報目標を設定している」とした設問でYesとご回答頂けた上場企業の割合は533社中わずか23.1%に留まっていました。
調査結果の詳細:上場企業を対象とした「第6回企業広報力調査」結果|企業広報戦略研究所

IRとPR/広報の連携においては、こうした目標設定を含むインテリジェンス(広聴)機能の強化が欠かせないことを、本コラムの前号でも記載したので、ぜひお読み頂ければと思います。

2番目の課題:期待値が最も高い「認知度/ブランド力/信頼性の向上」

差分が2番目に大きかったのは「認知度/ブランド力/信頼性の向上」でした。この項目は経営者の期待値が6項目の中でもっとも高く97.6%となっていますが、この高い期待に「現実」は6割を切る57.2%と追いついていないことが示されています。

ちなみに、もっとも「現実」の評価が高かったのは「メディアコミュニケーション(トップ広報含む)」で70.2%でした。記者などのメディアとのコミュニケーションはもちろん重要ではありますが、プロセスであって最終の目標ではないとも考えられます。

プロセスの先である「認知度/ブランド力/信頼性の向上」や「適正な株価の形成」といったアウトカムを意識したメディアとのコミュニケーションを図ることが広報の将来をさらに充実させ、経営機能としての役割を高めていくために重要なポイントだと考えます。

3番目の課題:「危機管理」は現状評価が低迷

差分3位は「危機管理」でした。この項目は「現実」の評価が5割を切っており、課題が大きい広報機能だと考えられます。経営機能としての危機管理広報は大きく分けて平常時と緊急時の二つがあります。

以前のコラムでも紹介しましたが、当研究所の広報力調査結果によると「リスクマネジメント活動に広報部門も参加している」と回答した企業は4割程度にとどまっており、残り6割の企業は広報部門がリスクマネジメントに関与していない可能性が考えられます(下図)。

平時においては、他社で発生している事件事故不祥事などをモニタリングし自社で発生した場合のシミュレーションを行い、有事においてはメディアや社内外のステークホルダーへのアカウンタビリティ(説明責任)を果たさなければなりません。

広報の定義文が示す「・・・双方向コミュニケーションによって、社会的に望ましい関係を構築・維持する経営機能」をまさに実行する重要局面となるため、更なる機能向上が必須と考えます。

そのためには、日々報道される企業リスク情報や、法規制の変化を捉え、効率的に社内で共有していく仕組みの導入が欠かせません。

広報を経営機能として育成していくために

日本広報学会が示した広報の定義と、その調査結果は非常に多くの示唆を含んでいます。
広報が経営機能として能力と評価をさらに高めていくためには、今回の差分が大きかった3機能を中心に、自社や業界の状況を良く観察して機能強化を図ることで、企業価値の向上を目指すことが重要ではないでしょうか?

本調査を推進された国枝准教授は、企業広報戦略研究所のインタビューで「広報を経営機能として成立させるためには、人材と体制の両面での整備が不可欠です。広報機能を担える人材の育成と、重要なステークホルダーや社会動向に関する情報収集・分析ができる体制を整えなければなりません。これらは一朝一夕で実現できるものではなく、相応のリソース投入を前提とした長期的な取り組みが求められます」と述べられています。

こうした課題に対して、実際に経営者らはどのように考え、取り組まれているのでしょうか?
次号では日本広報学会が行った経営者インタビューを中心に紹介したいと思います。

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次回もどうぞご期待ください。
※本コラムはELNET外部の筆者が執筆しています。

執筆者プロフィール


阪井 完二
企業広報戦略研究所(電通PRコンサルティング内) 所長 
◎専門領域:コーポレートコミュニケーション、企業ブランド、リスクマネジメント、パブリックアフェアーズ、ESG/非財務情報
◎主な著書:「新・戦略思考の広報マネジメント」「戦略思考の魅力度ブランディング」「戦略思考のリスクマネジメント」「PR式経営 ~パブリックリレーションズで創る企業価値」 など
◎受賞/審査員等:2024日本PR大賞審査員、日本PR協会PRアワードグランプリ審査員、マーケティング学会最優秀論文賞(ベストペーパー賞)受賞など


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