毎月更新「著作権」に関するケーススタディ
新聞や雑誌の記事をめぐる様々なケースにおける著作権についてイラストを含めてご紹介いたします。
事案 01
社内掲示板に記事を載せちゃった
広報担当者が、社内の電子掲示板(イントラネット)に自社の製品に関する新聞・雑誌記事を3ヶ月に渡って掲載。 本社、全国の支社から約7,000回のアクセスがあったが、内部告発により表面化した。
結果 01
約40万円の損害賠償を命じられた
新聞社や雑誌社など発行元の許諾をとっていなかったため、記事の筆者から複製権・公衆送信権の侵害として損害賠償請求を起こされた。裁判では侵害が認められ、電子書籍として販売された場合の使用料などをもとに、約40万円の損害賠償命令が出された。
記事をスキャンして電子掲示板に掲載することは「複製」にあたるので、閲覧者が社内のみの場合でも複製許諾が必要です。 全国の支社から見られる状態だったことで「公衆送信権」も侵害となってしまいました。
事案 02
無許諾複製、発覚しても改めず
自社に関する新聞記事を、広報課員が新聞社の許諾をとらずに切り抜いて複製、クリッピングを行っていた。新聞社が、違法コピーがないか業界別に聞き取り調査をしたことで判明。新聞社は許諾申請を要請したが、実務担当者は6ヶ月たっても応じることなく、クリッピングを続けていた。
結果 02
さかのぼって許諾料を支払い
新聞社は、実務担当者の上司と直談判。上司は全面的に非を認めた。クリッピング許諾料は、要請を無視した半年前にさかのぼって支払われた。
許諾が必要だと知らなかった場合もあるでしょうが、このケースは、新聞社からの要請があった時点で分かったはず。担当者レベルで留め置かずにすぐ上司と相談して、許諾などの善後策を取るべきでした。放置すればするほど、さかのぼって支払う場合の予算措置などが大変になります。
事案 03
有料データベースからコピー
「新聞で紹介された 我が社の新商品・新サービス」のタイトルで、社内ポータルサイトに一覧表を載せている。
内容は、新聞記事の見出し・本文を、有料データベースからコピーして貼り付けたもの。データベース契約更新の際に、業者にこの使い方を披露したところ、問題化した。
結果 03
利用規約違反なので契約解除
有料データベースの利用規約では、複製・蓄積は禁止だった。違法コピー状態のまま、ポータルサイトに載せていたことになる。規約違反により、データベース利用契約は解除となった。
有料データベースは一般的に蓄積を禁じています。利用規約を充分に確認した上で、活用しましょう。ポータルサイトに載せたい場合には、ネットワーク共有型サービスで利用人数分を契約すれば解決できます。
事案 04
外注先の業者が無許諾コピー
広報部が、外注による自社関連記事クリッピングを始めた。当然外注先の業者が複製許諾をとっていると思っていたが、コンプライアンス部から指摘され確認したところ、外注先業者は許諾をとっていなかった。
結果 04
コンプライアンス部から支払いの「指導」
コンプライアンス部から指導が入り、クリッピング開始日からの許諾料を、各新聞社に支払うことになった。格安業者を見つけたと喜んでいたのに、かえって予算外の支出となってしまった。
「クリッピング作業者が許諾を取っているはず」と思い込み、無許諾のエアポケットに落ち込むのが一番危険です。作業者から利用者までの間のどこかで、必ず許諾をとらなければいけません。
事案 05
苦労した要約、実は権利侵害!?
その日の朝刊から関係記事を10件程度ピックアップして、本文要約の一覧を作っている。担当者は「コピーではなく、手間をかけて要約しているのだから、著作権問題は発生しない」と考えていたが、念のため顧問弁護士に質問したところ、著作権侵害と指摘された。
結果 05
5年前までさかのぼって許諾申請
要約を始めた5年前にさかのぼって、記事を使った新聞社に許諾申請を出すことになった。新聞社ごとの利用件数の確認と許諾申請作業で、1週間忙殺された。
原作品を読まなくても内容がわかるような要約は、著作権法で保護される「翻案」にあたるため、著作権者の許諾が必要です。
また、勝手な「改変」も許されないので、ご注意を。
事案 06
見出しを大量に書き写していた
朝刊各紙から自社に関係ある記事20~30本の見出しを書き写して一覧表を作り、幹部にメールしている。本文の書き写しは行っていないので、無許諾複製にはあたらないと思っていたが、新聞社のサイトには「見出しにも著作権がある」という記述があった。
結果 06
不法行為とされた前例を見て、即刻中止
裁判例などを調べたところ、「苦労してつけた見出しを、ただ乗りで大量に複製利用していたネット業者が、不法行為として賠償命令を受けた例もある」とわかった。見出しの大量の書き写しは、中止することになった。
新聞社では、記事の本文だけでなく、見出しについても著作権などを主張する場合があります。継続的に相当の量を複製しているとなると、新聞社に相談されることをお勧めします。
事案 07
海賊版撲滅の足元で無許諾コピー
映像コンテンツ企業が、コンテンツ防衛のため「海賊版撲滅」キャンペーンを始めた。
ところが、社内関係者らしいツイッターで「足元では新聞・雑誌記事の無許諾コピーが横行しているのに」と暴露され、ネット炎上となった。
結果 07
「お詫び」を出しても沈静化までには長期間
無許諾コピーについてお詫びのコメントを発表し、著作権処理済みのネットワーク型サービスを契約した。炎上が沈静化するのに3週間かかった。
自社のコンテンツの権利を胸を張って主張するためには、他者の権利も充分に尊重することが必要です。
事案 08
契約違反の複製印刷、発覚
広報課に届く記事切り抜きFAXは、複合機でPDF化され、社内全員がアクセス、印刷できる共有ファイルに自動格納されていた。法務部の契約担当スタッフが気づき、「クリッピング会社との契約に違反しないのか。違約金を請求される恐れがある」と問題化した。
結果 08
違反利用分を清算協議
クリッピング会社との契約ではFAXの複製印刷は禁止だった。FAXのPDF化、共有ファイル格納を即刻中止して、クリッピング会社と違反利用分の清算協議に入った。
「契約違反」リスクが、重要視される時代になりました。FAX納品の際の利用契約を確認しましょう。不正な数の印刷はしないなどの対応が必要です。
事案 09
クリッピング外注が部門ごとバラバラ
各部門ごとにクリッピングを外注していたが、広報部ではそれぞれの契約内容、複製許諾の有無など把握していなかった。外注費も、各部門で予算項目が「調査費」「データベース費」などバラバラ。会計部門から是正を指示された。
結果 09
広報部が一本化、無許諾状態から脱出
広報部が全社調査を実施して契約内容を把握、ネットワーク型サービスの契約に一本化した。無許諾だった契約もあったが、違法状態を脱した。部門ごとにキーワード設定が可能なサービスなので、機能は維持しつつ、コスト上でも大きなメリットを生み出した。
無許諾問題の解決、無駄排除によるコスト削減、などは胸を張って行える業務です。広報、法務、知財部門などが協力して進めましょう。
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