【ELspot+】広報の常識が変わる、AI活用術~24時間稼働の広報室とLLM時代の情報発信戦略~

【本日の流れ】
1:レクチャー:広報のAI活用術
ゲスト講師:鈴木 正義 氏(アドビ株式会社 執行役員 広報本部長)
2:質疑応答
3:グループワーク&ディスカッション
4:参加者の感想
5:講師からのメッセージ
【背景】
日々進化していくAI――。情報の探し方は、すでに「検索する」から「AIに聞く」へと大きく変わりつつあります。また、AIを活用した社内ナレッジの再編集・再発掘も進んでいます。
私たちはそのような変化とどう向き合い、それらを広報の仕事にどう取り入れれば良いのでしょうか。まだまだ十分に活用できず、模索している企業も多いのではないかと思われます。
そこで、2月のELspot+では、AIを活用した広報業務の革新・生産性向上に積極的に取り組んでいるアドビ株式会社の執行役員・広報本部長の鈴木正義氏を講師にお招きし、「広報×AIの最前線」を実践と戦略の両面から学ぶ交流勉強会を開催しました。レクチャーでは、アドビ広報でのAI活用の実践事例のほか、知っておくべきAIリスクとの付き合い方や、最近話題のゼロクリックサーチの現状と対策についてもお話しいただきました。
本レポートでは、交流勉強会当日の内容・様子をお届けします。
【本日の交流勉強会】
1: 広報のAI活用術(鈴木 正義 氏)
ゲスト講師:鈴木 正義 氏(アドビ株式会社 執行役員 広報本部長)
https://www.adobe.com/jp/

【Contents】
1)最高の広報とは、ストーリーに共感してもらうこと
2)アドビのAcrobat AI Assistantを使った広報業務の革新~ストーリーの発掘~
3)知っておくべきAIのリスクとの付き合い方
4)ゼロクリックサーチ時代の広報戦略
5)アドビのミッション:Creativity for All
【Summary】
1)最高の広報とは、ストーリーに共感してもらうこと
レクチャーでは、まず「広報の仕事とは何か」という問いかけから始まりました。広報の仕事とは、単に会社や製品のことを「知ってもらう」「理解してもらう」ことではなく、その奥にある「ストーリーに共感してもらう」ことがゴールだ、と鈴木氏は言います。
●「どんな会社にも、開発者の思いや創業の物語といった“語るべきストーリー”があります。そのストーリーを発掘するのが、広報の仕事の第一歩です。そして、AIを活用することで、さまざまな『ストーリーの発掘』ができるのではないか、というのが今日のテーマです」(鈴木氏)
2)アドビのAcrobat AI Assistantを使った広報業務の革新~ストーリーの発掘~
では、AIをどのように活用すれば「ストーリーの発掘」ができるのか――。その具体的な実践例として「アドビのAcrobat AI Assistantを使った事例」について、デモを交えながら紹介いただきました。
《Acrobat AI Assistant》
https://www.adobe.com/jp/acrobat/generative-ai-pdf.html
▶ AI活用事例①:Acrobatにさまざまな文書を読み込ませて「自分専用のAI」を作る
・会社案内や製品カタログを読み込ませて、会社や製品の特徴や強みを抽出できる
・100ページ以上の資料や複数資料を一括で読み込み、サマリーを作れる(翻訳もできる)
・決算資料や過去のリリースを読み込ませて、記者からの質問に即答できる
・プレスリリースやQ&Aを作成できる/ボイスレコーダーから議事録を作成できる
……など
▶AI活用事例②:PDFスペース機能を活用し、「24時間対応広報室」を作る
・2025年の全リリースを読み込ませることで、記者からの質問に対して「365日24時間対応」することができる
・広報では気づかなかった視点からの「2025年の自社の10大ニュース(アナザーストーリー)」を作成することができる
……など
● 「これら以外にも様々なAI活用ができると思います。たとえば、過去の社内報、あるいは製品開発時の要件定義書などを読み込むことで、AIが『会社の創業ストーリー』や『製品の開発物語』を語ってくれるかもしれません。AIを、単なる効率化のツールとしてではなく、“ストーリーを発掘するツール”として活用すると、もっともっと面白いことができるのではないかと思います」(鈴木氏)
3)知っておくべきAIのリスクとの付き合い方
一方で、AIを活用する際に気をつけるべきリスクについて、アドビ(Acrobat)での対策例と合わせて解説・紹介いただきました。
▶情報漏洩:自社の機密文書をクラウドにアップすると、AIの学習に使われてしまうのではないか
→AcrobatのAIの場合、使い終わったデータは消す仕組みになっている
▶ハルシネーション:AIが間違った情報を教えてくるのではないか
→AcrobatのAIは、読み込んだ資料内の情報のみを参照する。また、回答の引用元(ソース)に直接ジャンプすることができる
▶著作権侵害:他人の著作権を侵害しているのではないか(類似性と依拠性について)
→画像生成AIの学習に当たっては、著作権フリーのストック写真等のみを使用している
▶問題表現:犯罪や暴力、差別・偏見など問題のあるコンテンツを意図せず生成していないか
→暴力、反社会的ワードからは画像生成できないようになっている
《ご参考:Adobe Firefly を適切に活用するための著作権との付き合い方》
https://blog.adobe.com/jp/publish/2024/01/18/cc-firefly-understanding-copyright-to-utilize-fireflty-generative-ai-issues
4)ゼロクリックサーチ時代の広報戦略
次に、最近話題となっている、「ゼロクリックサーチ」(※ユーザーが検索結果に表示されるAIの回答で満足してしまい、企業のウェブサイトを見に来なくなる現象)の現状と対応策について解説いただきました。
▶むしろ、質の高いユーザーが訪問している:ゼロクリックサーチ現象は、企業の広報にとって一見ピンチに思えるが、実際のデータを見ると、AIの情報を経由したユーザーの方が商品の購入率が高く、返品率も低い。
▶AIにきちんと学習してもらうことが新たな広報戦略になる:そのため、AIがどのメディアを主に参照(サイテーション)しているかを把握した上で、そのメディアに対して重点的にアプローチして自社のことをきちんと学習してもらうことが、今後、広報戦略としても重要になる。
● 「これからは、GEO(Generative Engine Optimization:AIエンジン最適化)が重視され、広報としては、『AIに選ばれるための情報発信』が重要な戦略の一つになるでしょう 」(鈴木氏)
5)アドビのミッション:Creativity for All
最後に、アドビのミッションをご紹介いただきました。
▶アドビのミッション:Creativity for All
広報のようなプロクリエイターではない人に「クリエイティビティの力」を届けることが、アドビの使命です。
2:質疑応答
Q1:AIが参照元として重視するのは、どのようなメディアが多いのでしょうか?
A1:AIが重視するメディアは、基本的には、大手新聞社などの“権威のある”メディアが多いようです。それ以外としては、自社サイトやリリース記事はもちろんですが、政府や行政機関のサイト、詳細な解説記事を載せている専門メディアや専門ライターのページ、noteやYoutube、各まとめサイトも多いようです。(鈴木氏)
Q2:もし、AIが差別的な表現を出力してしまった場合、それをチェックできる仕組みはあるのでしょうか?
A2:差別や偏見を含む表現をAIで出力しないようにする技術的な動きは進んでいますが、完全ではありません。念には念を入れて、別のAIによるクロスチェックをするのが有効ではないかと思います。(鈴木氏)
3:グループワーク&ディスカッション
レクチャーの後、グループに分かれ、下記の3つの項目についてディスカッション&アイデア出しを行いました。
●社内に眠っている書類には、どのようなものがあるか?
●それらの書類を組み合わせると、どんな情報(ストーリー)が生まれるか?
●その情報を広報に応用するには、どのようなアイデアがあるか?
《ディスカッションでの主なアイデア》
▶ 社内報や社史から「会社のヒストリー」を作る
過去の社内報や社史、掲載誌、映像データなどをAIに読み込ませ、自社や自社製品の歴史をたどるストーリーを作る。周年行事の記念コンテンツ、映像ミュージアム作品、新入社員の研修資料、プレスツアー資料などとして活用する。
▶ 属人化している専門知識をマニュアル化して、社内で共有する
属人化している「ベテラン広報のスキル」や、開発者しか分からない「特許技術」、営業現場の「言語化されていないノウハウ」などをインタビュー音声からAIに読み込ませ、社内の共有資産としてマニュアル化する 。
▶ 競合他社との比較分析を行い、自社の強みを抽出する
自社のカタログと競合他社のカタログを両方読み込ませて比較分析することにより、自社の強み・弱みを抽出する。
▶ 関連法規を読み込ませ、リーガルチェックを行う
自社に関連する法規や法令類を読み込ませ、広報する際に間違いや違反がないかどうかチェックする。
……など
4:参加者の感想
今回の交流勉強会の参加者からは、次のような感想がありました。
・AIの特徴や最新トレンド、活用方法、リスクへの対策を学ぶことができ、「明日から実践してみよう」という気持ちになりました。
・広報業務とAIの融合についてのヒントをいただきました。「ストーリーを発掘する」という視点で、広報業務を捉え直したいと思います。
・「ゼロクリックサーチ」や「GEO」については、今後、広報戦略として非常に重要になると思います。今日の内容を参考に、具体的なアクションをしたいと思います。
・グループワークで他社の広報の方と交流ができ、他社のAI活用状況や課題を知ることができました。自分には無い発想やアイデアが得られたことが大きな収穫でした。
5:講師からのメッセージ
・弊社の事例の紹介だけでなく、いろいろな企業団体の広報の方と意見交換ができ、有益な会に参加させていただけたと実感しています。AIはまだまだ発展途上と思いますので、当社も広報のネットワークを通じて互いに学ぶ機会を持ちたいと思います。









