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【広報コラム】パブリックリレーションズを経営に!NO.12「危機管理投資 ~リスクって“テイク”していいの?〜」

こんにちは。(株)電通PRコンサルティング 企業広報戦略研究所 所長の阪井完二です。

前号、前々号において、企業の「危機管理投資」についてご説明してきました。今号では、最新の調査結果を踏まえつつ、パブリックリレーションズにおけるリスクマネジメントについて考えていきたいと思います。

リスクテイク思考とは?

東京証券取引所などが、企業価値向上を目指すための経営指針として上場企業に求めている「コーポレートガバナンスコード」には、このような文言が書かれています。

・基本原則4(2) 経営陣幹部による適切なリスクテイクを支える環境整備を行うこと
「取締役会は、経営陣幹部による適切なリスクテイクを支える環境整備を行うことを主要な役割・責務の一つと捉え、経営陣からの健全な企業家精神に基づく提案を歓迎しつつ、説明責任の確保に向けて、そうした提案について独立した客観的な立場において多角的かつ十分な検討を行うとともに、承認した提案が実行される際には、経営陣幹部の迅速・果断な意思決定を支援すべきである。」


“ゼロリスク志向”が強いと言われる日本社会において、取るべき経営指針に「リスク」を「テイク」するように促す文言が記載されていることに違和感を覚える人もいらっしゃるかもしれません。しかし、極力リスクの少ない判断を重ねていると、当然ですが新たな変化やイノベーションは生まれにくい。結果として成果(リターン)が少なく、世界各国との競争に置いて行かれる状況に陥っていくローリスク・ローリターン経営になってしまいます。無難な判断をしているだけでは、経営とは言えません。

新たな挑戦には失敗やリスクがつきものです。ダメージコントロールを考えながら、「迅速・果断な意思決定」を促すためには、なにが必要なのでしょうか?
 
それは、多面的な情報の収集能力と、俯瞰した分析能力=インテリジェンス能力だと考えます。自社を客観的に俯瞰して評価するインテリジェンス活動の基本パターンとして「3大視座×3大ステークホルダー視点」の話は、本コラムのNo.10で紹介いたしていますので、こちらも併せてお読みください。
https://www.elnet.co.jp/column/dprcolumn10/

日本企業が苦手と言われている“リスクテイク”を行うための「インテリジェンス」に注目が集まってきています。ELNETで2024年1月~2月に「インテリジェンス」を含む新聞記事件数はわずか153件でしたが、2025年同時期は384件、2026年には1,641件まで急増しています。社会の要請の変化は、こうした報道データベースを活用して読み取ることができます。

最新の調査結果から、企業のインテリジェンス活動傾向

注目が高まる企業のインテリジェンス活動について、企業広報戦略研究所が隔年で実施している企業の広報責任者を対象とした調査から、前号でもリスクマネジメント力のうち3つの活動実態についてご説明しましたが、今号では他の2つのインテリジェンス活動についてデータを用いて解説を進めたいと思います。


このグラフは、調査にご協力を頂いた533社を、全体活動量の多いSランク以上の企業(n=109社)と、ボリュームゾーンBクラス(n=226社)に分けて比較をしています。
 
まず、上段の「社外の声(有識者・メディアなど)を取締役会に反映する仕組みを導入している」ですが、S以上の企業では約半数、Bランクでは1割程度の実施率との結果になりました。
たとえ耳障りな話であっても、PR/広報部門が情報参謀となって、企業の意思決定機関(取締役会)に伝えていくことは重要です。

ある企業のPR担当役員の話ですが、「取締役会でなるべく耳の痛い話を丸めることなく、そのままの表現で、毎回1,2件報告するようにしている」という事でした。類型化して何件あったとかではなく、ステークホルダーのダイレクトな生声を共有することで、肌感覚でリスクを感じ取れるようにすること、これが重要とのことでした。

二つ目、下段の項目「自社の経営リスクを継続的に予測している」はS以上の企業では9割に迫る実施率となりました。一方、平均的なBランクでは2割未満となり、大きな差(68.5pt)となりました。BANIやVUCAなど不確実性が高いと言われている現代社会において、自社を取り巻くリスクを予測し影響を検討していく「リスクアセスメント」は経営に必要不可欠な業務と考えます。

一般的には自社のリスクを類型化し、発生可能性と重篤度(経営に与えるダメージ)を掛け合わせて1枚のリスクマップにプロットするパターンが多くあります。自社を客観的に俯瞰し評価するには非常に有効な手段ですので、是非できるところから着手して頂き、議論を活性化して頂ければと考えます。


こうした、ステークホルダーからの耳の痛い生声を取締役などに届け、俯瞰したリスク予測を続けることが、コーポレートガバナンスコードが求める、「適切なリスクテイクを支える環境整備」「迅速・果断な意思決定」につながると確信しています。

リスクマネジメント活動の業界別比較

ここからは、業界別のリスクマネジメント活動の傾向について紐解いていきます。


このグラフは、先ほどのデータと同様に企業広報戦略研究所が隔年で実施している企業の広報責任者を対象とした調査のうち、リスクマネジメント活動10項目について、全体平均(縦棒)と、代表的な6業種(折線)の活動量を比較したものです。

全体傾向としては、「リスクマネジメント活動に広報部門が参加している」が最も活動量が多いものの、4割程度。最も活動量が少ないのが、緊急時に報道機関を対象とした記者会見を模擬的に事前訓練しておく「メディアトレーニングを実施している」で、2割未満という結果でした。

業種別特徴としては、BtoCの代表格である「食料品業界」は、「リスクマネジメント活動に広報部門が参加」や「生活者・顧客からの声(ご指摘)が広報部門に共有される体制を整備している」が多く、インフラの代表格である「電力・ガス業界」ではインテリジェンス活動の一つ「自社の経営リスクを継続的に予測している」やメディアトレーニング実施率が高い傾向でした。

また「グローバルリスクが自社に与える影響を予測している」は、繊維・化学・医薬業界の実施率が若干高い傾向です。
こうした業種別特徴は、各業界が抱えるリスクの影響度の大小によるもので、適切なバラつきと考えますが、全体としては、もう1段、2段活動量を増やすことが、コーポレートガバナンスコードが求める“適切なリスクテイク”につながると考えます。

パブリックリレーションズにおけるリスクマネジメント

最後にパブリックリレーションズにおけるリスクマネジメントとは、自社のステークホルダー、特に鍵となる重要な“Keyステークホルダー”の期待と不安に応えることが大切となります。そのために、法的に問題が無いから良いのではなく、ステークホルダーの期待や不安に寄り添う姿勢が重要となってきます。

法的側面に加え、心理的側面も含めて俯瞰的に自社の状況を見極め、経営陣と共に、積極的な危機管理投資・リスクテイクにチャレンジしていただければと考えます。

広報担当者の方の毎日の情報収集に。
ELNETのクリッピングサービスは新聞約100紙、雑誌約30誌、WEBニュース約1,000サイトからの収集した記事情報をお届けします。


次回もどうぞご期待ください。

※本コラムはELNET外部の筆者が執筆しています。

執筆者プロフィール


阪井 完二
企業広報戦略研究所(電通PRコンサルティング内) 所長 
◎専門領域:コーポレートコミュニケーション、企業ブランド、リスクマネジメント、パブリックアフェアーズ、ESG/非財務情報
◎主な著書:「新・戦略思考の広報マネジメント」「戦略思考の魅力度ブランディング」「戦略思考のリスクマネジメント」「PR式経営 ~パブリックリレーションズで創る企業価値」 など
◎受賞/審査員等:2024日本PR大賞審査員、日本PR協会PRアワードグランプリ審査員、マーケティング学会最優秀論文賞(ベストペーパー賞)受賞など


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