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【広報コラム】パブリックリレーションズを経営に!NO.2「 社会との関係は“資本”なのか?」

2025年4月から連載コラム「パブリックリレーションズを経営に!」を担当しております、企業広報戦略研究所 所長の阪井完二です。

第1回は2025年3月に慶應義塾大学において開催された【「企業価値に資する人的資本経営」研究コンソーシアム】で筆者が講演した「人的資本経営のコミュニケーション戦略 ~個人投資家をファンにするには?~」をベースに執筆いたしました。

注目の「非財務情報」とは?

その際に、企業として急激に注目度が高まっている「個人投資家」というステークホルダーに向き合うにあたって、人的資本などをはじめとした「非財務情報」への関心が個人投資家と企業の双方から高まっているという話をしました。企業のIR説明会や統合報告書、また経済メディア、投資ファンドの報告書など様々なシーンで近年目にすることが多くなった「非財務情報」という言葉ですが、なぜ注目されているかを一言で表すと「将来価値」だからと言えます。
下の図に示すように「非財務情報」と対をなす「財務情報」は過去の企業活動の結果であり「見える価値」であることに対し、「非財務情報」はその企業が将来どのように成長する可能性があるのか?または危険性をはらんでいるのか?「見えない価値」だからこそ、投資家やメディアが一生懸命にその企業をリサーチし、取材や対話を重ねて「将来価値」を探っているからだと考えております。


「社会・関係資本」ってなんだ?

この「非財務情報」というのは国際統合報告評議会(IIRC)という規制者、投資家、企業、基準設定主体、会計専門家、学識者やNGOなどにより構成された国際的な連合組織によって議論を重ねて制定されたものです。非財務情報は、製造資本知的資本人的資本社会・関係資本自然資本の5つから構成されるとされております。
今回のテーマである「社会・関係資本」は、原文では「Social and relationship capital」と記載されています。そして、定義文としては「The institutions and the relationships within and between communities, groups of stakeholders and other networks, and the ability to share information to enhance individual and collective well-being.(邦訳:個々のコミュニティ、ステークホルダー・グループ、その他のネットワーク間又はそれら内部の機関や関係、及び個別的・集合的幸福を高めるために情報を共有する能力)」
とされており、さらに含むものとして「Key stakeholder relationships(キーステークホルダーリレーションシップ」「brand and reputation(ブランドやレピュテーション)」「social licence(ソーシャルライセンス)」などの単語が並んできます。

これらはまさにパブリックリレーションズの考え方でも頻出するキーワードでもあります。特に「ソーシャルライセンス」は重要で、例えば「メッセージアプリA社の情報セキュリティがしっかりしているのでビジネスでも活用されている」「あの電力会社なら、原子力発電の再稼働は容認できる」などの社会的許諾や容認は、商売の基本中の基本ともいえる“信頼”そのものではないでしょうか?
顧客や地域住民などのステークホルダーと丁寧な対話を長年、苦労してコストをかけて続けてきたものは、一朝一夕には他社がまねする事ができない重要な“資本”であるとして「非財務資本」の一つに認定されているのです。

業界によって異なる期待や不安

当研究所では、これら非財務資本に対して個人投資家がどのように関心を持っているのかを探るために慶應義塾大学保田隆明教授らと開発した「非財務クロスバリュー」というモデルを活用して調査分析をおこなっています。
その結果、本モデルで定めた15領域のうち上位5つを「人的資本」と「社会・関係資本」で占める結果となりました。
「社会・関係資本」においては6つの調査項目を設定していますが、G(ガバナンス)領域とのクロス項目である「企業価値向上のための経営計画やビジョンなどの説明」が1位に、次いで2番手にE(環境)領域とのクロスである「環境に配慮したサプライチェーン(原料調達、製造、在庫管理、配送、販売など)の構築」が続く結果となりました。
しかし、これらは全業種の平均スコアであって、業種別にみると少し様相が異なる結果となっています。
例えば、電力・ガス業界や輸送用機器・精密機器業界においては「新しい市場獲得やルール形成に向けた情報収集や対話」といったG(ガバナンス)領域の社会・関係資本が重視され、機械業界や建設業界では「地域社会への経済的貢献や社会課題への取り組み」といったS(ソーシャル)領域の社会・関係資本が重視される結果となっていました。
 
こうした違いは第1回のコラムでも記載した筆者の企業におけるパブリックリレーションズに対する考え方「ステークホルダーの期待や不安に応える」の表れではないかと感じています。業界によって重要となるステークホルダーは当然違いがあり、業界に対する期待や不安も様々だと考えます。こうした声に丁寧に耳を傾け自社への信頼を構築していくことが「社会・関係資本」の基礎であり、発展につながると考えられます。

自社に対する期待や不安の声を効率よく収集し、マネジメントをしていくのは、とても大変なことです。ですが、小さな芽の段階から情報収集・社内共有をおこない、全社的に対応策を検討していくことが社会との関係性をより良くしていくには欠かせない仕事です。
 
「信頼を築くには時間がかかるが、壊れるのは一瞬」と昔からよく言われますが、昨今のメディア環境では特にそのスピードが加速しているように感じます。社会との関係性は重要な“資本”であると、今一度認識を強化し、それらを社員がみんなで守って育てていくようにするためには、効率よく情報をモニタリングし、社内共有する仕組みを上手に活用していくことが重要になってきているのではないでしょうか。
そのうえで、年に1度は健康診断と同様に企業と社会(重要ステークホルダー)との関係性を定量的に測定することも大切です。前年に比べて良くなってきているのか? それともなにか悪くなってきている部分はあるのか?などを測定し、経営と共有し対策を検討していくことが欠かせないと考えます。

毎朝必要な記事を効率よく収集!
ELNETのクリッピングサービスは新聞約100紙、雑誌約30誌、WEBニュース約1,500サイトからの収集した記事情報を毎朝お届けします。


第3回目以降では、ステークホルダーとの良い関係性を構築し、企業価値を高めるための「価値づくり広報モデル」に基づいた情報をお届けしていきたいと思います。

※本コラムはELNET外部の筆者が執筆しています。


執筆者プロフィール


阪井 完二
企業広報戦略研究所(電通PRコンサルティング内) 所長 
◎専門領域:コーポレートコミュニケーション、企業ブランド、リスクマネジメント、パブリックアフェアーズ、ESG/非財務情報
◎主な著書:「新・戦略思考の広報マネジメント」「戦略思考の魅力度ブランディング」「戦略思考のリスクマネジメント」など
◎受賞/審査員等:2024日本PR大賞審査員、日本PR協会PRアワードグランプリ審査員、マーケティング学会最優秀論文賞(ベストペーパー賞)受賞など


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