【ELspot+】 『「ブランドガイドライン」が実現する、「らしさ」の明確化と広報の効率化』

【本日の流れ】
1:レクチャー:「ブランドガイドライン」が実現する、「らしさ」の明確化と広報の効率化
ゲスト講師:板倉 マサアキ 氏(株式会社 揚羽 シニアコンサルタント クリエイティブディレクター)
2:質疑応答
3:グループワーク&ディスカッション
4:参加者の感想
5:講師からのメッセージ
【背景】
いま、企業の「ブランディング」が注目を集め、多くの企業で自社の理念や価値を明確化して表現・発信する取り組みが行われています。強いブランドを形成するためには、世の中に対して一貫したブランドイメージを発信することが重要です。そのために必須となるのが、「ブランドガイドライン」です。
「ロゴマニュアルならすでにある……」という企業は多いと思いますが、しかし、それだけでは企業の「らしさ」を統一・創造するには非効率で限界があります。では、「ブランドガイドライン」とはどのようなもので、どのように策定すればいいのでしょうか――。
そこで、1月のELspot+の交流勉強会では、人的資本に立脚したブランディング支援に強みを持つ株式会社揚羽の板倉マサアキ氏に、ブランディングの取り組みを効率化し、自社の「らしさ」が資産になる「ブランドガイドライン」の策定ステップや活用の実践事例をご紹介いただきました。
本レポートでは、レクチャーのサマリー、質疑応答・ディスカッションの内容、および、参加者の方々の感想をお届けします。
【本日の交流勉強会】
1: レクチャー: 「ブランドガイドライン」が実現する、「らしさ」の明確化と広報の効率化(板倉 マサアキ 氏)
ゲスト講師:板倉 マサアキ 氏(株式会社 揚羽 シニアコンサルタント クリエイティブディレクター)
https://www.ageha.tv/
【Contents】
1)ブランディングとは、「らしさの資産」を見える化すること
2)一貫したブランドコミュニケーションを実現する「ブランドガイドライン」
3)「ブランドガイドライン」の策定ステップ~株式会社揚羽での実践事例~
4) まとめ:「ブランドガイドライン」をアップデートし、「らしさ」を強化する
【Summary】
1)ブランディングとは、「らしさの資産」を見える化すること
多くの企業がブランディングに取り組む中で、板倉氏は、その本質を「らしさ」の資産化と定義します。
●「ブランディングとは企業が本来持っている価値(らしさ)を見える化し、ステークホルダーとの共感的な関係を築いていくことです。その結果として『らしさ』が資産となり、競合との差別化や有利な取引条件、リピート率向上といった、自社事業の成長基盤が創り出されるのです」(板倉氏)
その時に重要になることが、「一貫したブランドコミュニケーション」です。
● 企業が情報を発信する相手(ステークホルダー)は、従業員、求職者、顧客、株主など多岐にわたります。しかも、その時々で属性は変化します。たとえば、求職者は入社すれば従業員になり、退職すれば顧客や株主になる可能性があります。そのため、ブランドイメージを蓄積するためには、どのような属性に対しても一貫性のあるメッセージを発信し続けることが重要です」(板倉氏)
2)一貫したブランドコミュニケーションを実現する「ブランドガイドライン」
しかし、企業の現場では、「ブランド表現が各部署でバラバラ」「毎回、イチからブランド表現を考えている」……などの困りごとが多く起きているのが実態です。その問題を解決するのが「ブランドガイドライン」です。板倉氏は、いわゆる「ロゴマニュアル」と「ブランドガイドライン」の違いを、次のように説明しました。
▶ ロゴマニュアル:ロゴの余白規定や指定カラーなどのルールを規定したもの
▶ ブランドガイドライン:その企業の理念や個性を、デザインや言葉の表現まで含めて規定し、ステークホルダーに対して一貫したブランドコミュニケーション体験を提供するもの
● 「ステークホルダーに『らしさ』を明確に伝え、一貫性を保つためには、ロゴを超えた『らしさ』の規定である『ブランドガイドライン』が必要です。ガイドラインを整備することで、ルールだけでなく、ブランドの想いや価値観を伝えることができます。また、担当者の主観によるブレや迷いを防ぎ、広報コンテンツの制作効率を高めることができます」(板倉氏)
3)「ブランドガイドライン」の策定ステップ~株式会社揚羽での実践事例~
では、「ブランドガイドライン」は、具体的にどのように策定すればいいのでしょうか。株式会社揚羽様での実践事例を紹介いただきました。
▶ステップ①:「ブランドキーワード」の抽出
経営層へのインタビュー、社員ワークショップ、全社員アンケートを行い、そこで語られた言葉から、企業の「らしさ」をいくつかのキーワードに整理・分類した上で(図1)、「ヒューマニティ」「ポジティブ」「ユニーク」「アドバイスド」という4つのブランドキーワードを抽出しました(図2)。

図1:らしさの整理

図2:ブランドキーワードの抽出
▶ステップ②:「コミュニケーションイメージ」の選定
抽出したブランドキーワードに基づき、その世界観を体現する「写真」や「ビジュアル」を選定し、写真全体を集合体として見た時に「この会社らしい」と感じられるようなコミュニケーションのイメージを作成しました(図3)。

図3:コミュニケーションイメージ
▶ステップ③:「カラーパレット」の作成
コーポレートカラー(ブランドカラー)が1色だけだと、コンテンツの表現が限定されがちです。そのため、ブランドキーワードを拠り所に、ブランドキーワードに合わせた「独自のカラーパレット」(プライマリーカラー、セカンダリーカラー)を作成し、「らしさ」を強化しました(図4)。

図4:カラーパレット
▶ステップ④:「グラフィックエレメント」の作成
ロゴやカラーといった主要な視覚要素に加えて、ブランドの世界観やメッセージを視覚的に補完し、一貫性を生み出すための装飾的な要素や図形パターンなどを作成しました(図5)。それによって、ロゴがなくても、見ただけで「あの会社だ」と伝わるオリジナリティの醸成と制作の効率化を両立できます(図6)。

図5:グラフィックエレメント
図6:グラフィックエレメントの活用
4)まとめ:「ブランドガイドライン」をアップデートし、「らしさ」を強化する
最後のまとめとして、板倉氏は「ブランドガイドライン」をアップデートする重要性について語りました。
● 「必ずしもロゴを変える必要はありませんが、経営層へのインタビューや社員へのアンケートなどに基づいて、定期的に『ブランドガイドライン』をアップデートすることが重要です。そうすることで、企業が本来持っている価値(らしさ)を社員が改めて再認識でき、組織全体の意思疎通やステークホルダーからの共感獲得にもつながります。そして、『らしさ』が資産としてさらに蓄積・育成・強化されていくのです」(板倉氏)
2:質疑応答
Q1:「ブランドキーワード」や「ロゴ」などの社内での検討・決定プロセスは、具体的にはどのように進めるのですか?
A1:プロセスは会社によってさまざまですが、一般的には、①経営層へのインタビュー、②中堅社員とのワークショップ、③全社員へのアンケートなどの結果に基づいて、ブランド価値(キーワード)を抽出します。ある企業では、半年をかけて全国の社員へのオンライングループインタビューを行いました。
最終案決定の際に、「全社員投票」を行う場合もあります。社員自らが選ぶプロセスを経ることで、新しいブランドに対する当事者意識を生み出すことができます。また、インタビューやアンケートの結果を経営層と現場社員で共有し合意形成を図ることも重要です。ブランド作りでは「経営と現場をつなぐプロセス」が非常に重要だからです。(板倉氏)
Q2:「ブランドキーワード」には、現状の「らしさ」だけでなく、将来の「ありたい姿」を含めてもいいのでしょうか?
A2:ぜひ、入れるべきだと思います。「現在に関するキーワード」と「未来に対するキーワード」を戦略的に組み込むことにより、5年、10年先のビジョンを見据え、「今は足りないが、こう感じてもらいたい」という要素を盛り込むことができます。(板倉氏)
Q3:「ブランドガイドライン」の使用を社内で浸透・徹底するには、どうしたらいいですか?
A3:「守れ」と強制するのは、なかなか難しいですよね。それより、「使った方が便利」という環境を作ることが大事だと思います。ある企業では、私どもがガイドラインに基づくパワーポイントのフォーマットを作り提供したところ、現場では「これを使うと資料が綺麗に、楽にできる」と思っていただき、結果的に自然とガイドラインを浸透・徹底させることができました。(板倉氏)
Q4:ブランドガイドラインのアップデートは、どのようなタイミングで行えばいいでしょうか?
A4:SNSの普及やデジタル化の進展など、情報発信ツールや環境が変化した場合はアップデートが必要になるでしょう。また、「周年行事」や「コーポレートサイトのリニューアル」時などは、ブランドガイドラインをアップデートする絶好のタイミングかと思います。(板倉氏)
3:グループワーク&ディスカッション
レクチャー・質疑応答の後、グループに分かれ、「いま、ブランディングで注力していること」「ブランドマネジメントで困っていること」をテーマに、自社でのブランドマネジメントの現状や課題について率直に意見交換&情報共有をしました。
《ディスカッションでの主な意見》
▶ ガイドラインを作ること自体が目的なのではない。「会社がどうありたいか」という理念やポリシーに立ち返ることが重要であり、それを具現化することが「ブランディング」であることを再確認した。
▶ ブランドは「新しければ良い」というのもではない。とくに、歴史ある企業では、「何を変えて、何を変えないか」を判断することが難しいが、それを考えることが「ブランディング」であると理解できた。
▶ 成長企業では、毎月多くの社員が入社する中で、会社のブランドストーリーをいかに新しい社員に浸透していくかが難しいという意見が出た。
▶ ブランドガイドラインがないことでイメージの統一に苦労している企業もあれば、ブランドガイドラインがしっかりしすぎていて柔軟な対応ができないという企業もあり、やはり、「ブランドマネジメントとは何か」という根本からの理解が重要であるということを話し合った。
4:参加者の感想
今回の交流勉強会の参加者からは、次のような感想がありました。
・ ブランドガイドラインの策定ステップや定めるべき項目など、具体的な作り方が明確になりました。自社に持ち帰り、導入を検討したいと思います。
・ 漠然としていた「ブランディング」という課題に対し、基本的な考え方や具体的な進め方が理解できました。自信を持ってブランド策定を推進できる気がします。
・ 数年後の周年行事に向けてブランドメッセージを再考していたので、絶好のタイミングでした。どのように「らしさ」を表現して展開していくべきかについて、大きなヒントを得ることができました。
・ 他社や他業界の人と直接話をすることで、広報やブランディングの悩みは共通していると再確認できました。同じ課題を持つ他社の状況を知り、心強い味方ができた気持ちです。
・ 他社との交流からの学びが多く、広報業務への意欲が湧いてきました。
5:講師からのメッセージ
・ご参加いただいた皆様、すごく前のめりに話を聞いてくださり、とても楽しく、私も勉強になる貴重な時間を過ごさせていただきました。愛されるブランドには必ず、熱い想いの広報担当者がいらっしゃいます。広報の皆様のブランドマネジメントへのお悩みは尽きませんが、今回の話を少しでもお役立ていただけますと幸いです。









