【ELspot+】『危機管理広報~フジテレビ第三者委員会報告書から学べること~』

【本日の流れ】
1: セミナー:「危機管理広報~フジテレビ第三者委員会報告書から学べること~」
ゲスト講師:遠藤 眞代 氏(Doen株式会社 代表取締役 CEO)
2:参加企業の「危機管理対応」事例紹介
3:参加者の感想
【背景】
インターネットやSNSの普及により情報が一瞬で拡散される現代において、企業の「危機管理対応」は、これまで以上に企業経営そのものの信頼・存続に直接関わる重要な広報業務となっています。
企業の不適切な対応が大きな社会的炎上につながるケースが増えている中、日々の広報現場でも、「何が炎上の火種になりうるのか?」「起きてしまったとき、どう対応すべきか?」を実践的な視点から振り返り、自社の「危機管理対応力」をアップデートする必要があるでしょう。
他社の炎上は、けっしてその企業だけに起こることではありません。他社で起こった事例を自身の広報活動に照らし合わせ、共通する課題を洗い出し、“その時”に備える必要があります。
そこで、5月の交流勉強会では「危機管理広報」をテーマに、広報実務経験があり、多くの企業で広報コンサルティングを行うDoen株式会社の遠藤眞代氏をお招きしました。
実際の「フジテレビの第三者委員会報告書」を題材に、「危機発生時に広報担当としてどのように向き合うべきか」を考えるセミナーを開催しました。
本レポートでは、セミナーの概要、事例紹介、参加者の方々の感想をお届けします。
【本日の交流勉強会】
1:セミナー:「危機管理広報~フジテレビ第三者委員会報告書から学べること~」(遠藤 眞代 氏)
ゲスト講師:遠藤 眞代 氏(Doen株式会社 代表取締役 CEO)
【主な内容】
1)「フジテレビ第三者委員会報告書」の内容の振り返り
最初に、「今回フジテレビで起こったことは、どんな業界・規模の企業でも起こりうる」ことを前提として、自社の問題として捉えることができるよう、フジテレビ第三者委員会報告書の内容を時系列に沿って確認・共有しました。
2)「フジテレビ第三者委員会報告書」から学べること
何が問題だったのか(仮説)
今回の問題点(仮説)として、「社内の情報共有体制」「広報への情報共有タイミング」「経営者の危機管理意識」「事実確認(ファクトチェック)」などが挙げられるのではないか、という指摘や解説がありました。
今後、何をすべきか(行動)
次に、報告書の内容検討を踏まえ、広報として「まずやるべきこと」「平常時からやっておくべきこと」「事後にやるべきこと」を考えました。
A:広報活動に対する経営者の誤解を解く(経営者にインプットすべきこと)
- 「広報=メディアコントロール」ではない
- 「広報は、事実を無かったことにする仕事」ではない
- 「広報は、ネガティブな情報をポジティブにすること」はできない
B:平常時からやっておくべきこと
- 経営者への危機管理に対する意識改善
→逃げない、隠さない
- 社内体制(危機対応、情報共有)の確立
→広報は自ら動くのではなく、いかに周りの人を動かすかが重要
- 社内の広報への信頼度の向上
→ 「社外の意見」と「社内の意見」の両方を客観的に捉えることができるのが広報
→日々の活動から得た情報や意見を、随時社内に伝えることで“頼られる存在”になる
C:危機管理マニュアルの見直しポイント
- 担当者(責任のありか)を明確にする
- 属人的な対応(その人しかできない)を見直す
- (社内外で連携できる)広報がイニシアチブを取れる体制にする
- (誰がいつまでに何をするかの)タイムラインに沿った行動指針を明確化する
- 小さな案件から、日々、練習(シミュレーション)をしておく
D:広報として事後にやるべきこと
- 事後においても、「(継続的な)ファクトチェック」「(事後に分かったファクトの)情報開示」「(必要に応じて)謝罪」が必要になる。その際に重要なことは「スピード」と「客観性」
広報として考えておきたいこと(講師からのメッセージ)
「半年後に、自分の会社で同様の問題が起こったとしたら、何をやりますか?」
2:参加企業の「危機管理対応」事例紹介
各参加者の企業では、どのような「危機管理対応」を行っているか、事例を紹介しました。
- 日頃から、経営者と、「最近、他社がこういう問題で炎上しています」「わが社に置き換えると、こうなります」「その場合、広報としてはこうします」ということを報告したり、話し合ったりする機会を設けている。
- 経営者や役員に対して、最新のメディアの状況(新聞社の編集体制、記者の問題意識など)を報告し、メディアの動向に対して関心・興味を持ってもらうようにしている。
- 役員と記者との距離を縮めるために、個別会食の場を設けている。
- 自社に関するSNS上のクチコミ・評判・風評をチェックすることで、小さなことでも、「もしかしたら、こうなるかもしれない」という炎上の可能性を予見・察知している。
- 危機が起こってから動くのでは遅い。危機が起こりそうな段階で、万一の炎上に備えて危機対応の準備をしている。
- 危機対応時のメディアとの連絡・回答に関しては、電話ではなく必ずメールで対応することによって、必要最低限な用件のみを確実に(細かすぎたり、広げすぎたりせずに)会社の公式見解として伝えるようにしている。
3:参加者の感想
今回の交流勉強会を振り返り、参加者から次のような感想がありました。
- 危機管理対応について、自社に置き換えて考えることができました。まずは、社内の情報共有の体制作りから始めようと思います。
- 内部での情報共有の大切さ、社内コミュニケーションの重要性を改めて実感できました。経営陣の意識改革と広報への信頼感の醸成を重点的に行いたいと思います。
- 広報としての基本である「スピード感&ファクトチェック」の大切さを改めて再認識できました。
- 昨今の状況を踏まえて、危機管理体制の見直しをしている最中だったため、大変参考になりました。危機管理マニュアルのアップデートの要点がわかりました。
- 危機管理対策を始めるにあたり、何が必要か、何から始めたら良いかに悩んでいる状態だったので、具体的なヒントを得ることができました。
- 炎上時の対応以上に、平時での準備が重要であることがわかりました。日々の「小さな案件」を通して練習を重ねたいと思います。
- 他社事例と比較して、意外と、当社の危機管理対応や情報共有体制は整備されていると感じました。そのことを、役員にもフィードバックし、危機管理に関するコミュニケーションの機会にしたいと思います。
