【広報コラム】パブリックリレーションズを経営に!NO.11「危機管理投資 ~他社はどのくらいインテリジェンス活動している?〜」

目次
こんにちは。企業広報戦略研究所 所長の阪井完二です。
前号においてリスクマネジメント活動におけるインテリジェンスの重要性が高まっていることをご説明いたしました。3大ステークホルダー(株主・投資家、顧客、従業員)視点、グローバルなど3大視座からみた自社分析など、多様な視座・視点から自社がおかれている立場を客観的に見つめ、先読みする力を高めることで、ビジネス成果やレジリエンスを高めていく必要性が強まっていると感じています。
増加するインテリジェンス組織
今や「経済安全保障」という言葉をニュースで聞かない日はほとんどない状況です。エネルギー調達の難しさ、目まぐるしい環境規制変化、製造資本調達ルートの不確実性など、グローバルにビジネスを展開する企業ほど、国や地域によって異なる環境・常識に柔軟かつスピーディーに対応しなければ生き残れません。
こうした中、例えば、自民党は外交や安全保障でより精緻な戦略を立てることを目的に2025年11月に「インテリジェンス戦略本部」の初会合を開きました。政府内に新たな司令塔として「国家情報局」を2026年内にも設立する方針だと報じられています。
民間企業においても、例えば日本の飲料大手企業は昨年、国内本社内にインテリジェンス本部を立ち上げ、アメリカの首都ワシントンD.C.にインテリジェンス拠点を設置したとしてニュースになっていました。世界のニュースの震源地に拠点を構え、フェースtoフェースで規制や税制変化の兆しを捉えることで、経営のレジリエンス力を高めていく重要性が高まっている一つの証左ではないでしょうか?
最新の調査結果から、企業のリスクマネジメント活動傾向
このように、経営の重要資源としての“情報”に注目が高まるなか、業界他社や上位企業がリスクマネジメントやインテリジェンス活動をどの程度実施しているのか、気になるところではないでしょうか?
今号では、最新の企業活動の実態調査から傾向と対策を考えていきたいと思います。
企業広報戦略研究所が隔年で実施した企業の広報責任者を対象とした調査では、独自に開発した「価値づくり広報モデル」に基づき、企業の広報活動を9つに分解して分析をしています。その全体傾向を示しているのが次の図となります。
調査詳細:https://www.dentsuprc.co.jp/releasestopics/news_releases/20241121.html
レーダーチャートの左下「リスクマネジメント力」に注目いただきたい。
この力は「企業リスクを予測・予防するとともに、発生した場合に自社資産や信用への被害を最小限にとどめるための組織的能力」と定義し、合計10の設問で企業の活動量を測定しています。
調査にご協力頂いた533社全体のリスクマネジメント平均スコアは30.2ポイントでした。 9つの広報力の中では「インパクト評価力」「エンゲージメント力」「ファクト力」についで4番目に低い結果で、全体平均を下回りました(このグラフには無いですが前回2022年調査よりもやや減少傾向です)。
特に、BtoB企業(326社)のリスクマネジメント活動量が低いのが気がかりで、BtoC企業(94社)と比較して10ポイント近くダウンしています。
日本企業の大多数をしめるBtoB企業は、産業と産業が密接に絡み合ってサプライチェーンを構築しています。ひとたび一つの企業で事件・事故が発生すると、高度にネットワーク化された業界なだけに、影響が甚大となる可能性があります。
BCP(Business Continuity Plan)の観点からも、積極的な危機管理投資が望まれるのではないでしょうか?
業界別リスクマネジメント活動量 1位は?
業界別にみると、リスクマネジメント活動量が多いのはインフラの雄「電力・ガス」業界で、唯一5割を超えるスコアを獲得。次いで、人体への影響が直接的にあり得る食料品業界の活動量が多い傾向となっています。
一方、リスクマネジメントの活動量が最も少ないのは「情報・通信」。この業界は前回2022年調査においても活動量が少ない業界の一つでした。昨今の多発しているサイバーセキュリティ問題などを考えると、他業界に与える影響は甚大です。AI・DX・通信インフラを支える業界としては奮起を期待したいところです。
社外環境を捉える3つのインテリジェンス
続いて、リスクマネジメント力10設問のうち、社外の環境を捉える3つのインテリジェンス(広聴)項目について、活動量の多いSランク以上の企業(n=109社)と、ボリュームゾーンBクラス(n=226社)とを比較してみました。
かなり大きな差が出ているのが見て取れると思います。
一番上のグラフ「生活者・顧客からの声(ご指摘)が広報部門に共有される体制を整備している」では、S以上クラスでは約6割の企業が実施しているとご回答頂いたのに対して、Bクラス企業群ではわずか15%の実施率にとどまりました。3大ステークホルダーの一つでもある顧客のご指摘=不安を、広報を始めとした社内各部門で共有するのは、インテリジェンス活動においても比較的容易な領域ですので、ぜひ共有の仕組みを構築してみてはいかがでしょうか?
次いで差が開いたのは「グローバルリスクが自社に与える影響を予測している」です。
この設問では、Bクラスの実施率が一桁7.5%に留まりました。比較的売上規模の大きなSクラス以上企業に比べ、平均的なBクラスにおいては海外でのビジネスが少ないのかもしれません。しかし、規模が小さいからこそ、グローバルリスクには目配りしておくことが企業の新たなビジネスチャンスに繋がる可能性もあります。
例えば、欧州を中心にIT/環境規制は目まぐるしく変化する傾向があり、そうした変化は半年から数年後に日本国内にも影響を及ぼしてきたことが過去に何度もあります。
こうした規制変化による商流や商材の変更が、新たなビジネスチャンスになる可能性があります。国内・海外のメディアなどを通じて変化の兆しを捕まえやすい環境になってきているので、感度を高め自社のビジネスチャンスの最大化に努めてみてはいかがでしょうか?
最後に一番下のグラフ「業界・競合企業で発生したリスク事案を把握・研究している」は64.7ポイントと最大の差となりました。もっとも身近な同業他社の事例は生きた教材です。
「大変だな~」と他人事のように眺めるのではなく、もし自社で同様の事案が発生したら? ・・・と置き換えて注視してみてはどうでしょうか。
事件・事故発生直後から様々な形で報道やSNSなどで憶測が飛び交い、信頼が毀損されていきます。その時、当事者企業はどのようにパブリックリレーションズ活動を行い、それに対してメディアやステークホルダーはどのように反応したのか? ELなどの報道データベースを使用して情勢を分析し、もし自社だったらどう対応するのか? 記者会見をどのように仕立てるのか? 出すべき情報/出す必要のない情報は? マネしてはいけない行動/見習うべき点は?・・・
こんな事を社内で侃々諤々シミュレーションしてみてはどうでしょうか?
自社のリスクマネジメント力が格段に高まること間違いなしです。
ELNETのクリッピングサービスは新聞約100紙、雑誌約30誌、WEBニュース約1,000サイトからの収集した記事情報をお届けします。
次号では、リスクマネジメント力の社内浸透などを中心に分析を深めていきたいと思います。
次回もどうぞご期待ください。
※本コラムはELNET外部の筆者が執筆しています。
執筆者プロフィール

阪井 完二
企業広報戦略研究所(電通PRコンサルティング内) 所長
◎専門領域:コーポレートコミュニケーション、企業ブランド、リスクマネジメント、パブリックアフェアーズ、ESG/非財務情報
◎主な著書:「新・戦略思考の広報マネジメント」「戦略思考の魅力度ブランディング」「戦略思考のリスクマネジメント」「PR式経営 ~パブリックリレーションズで創る企業価値」 など
◎受賞/審査員等:2024日本PR大賞審査員、日本PR協会PRアワードグランプリ審査員、マーケティング学会最優秀論文賞(ベストペーパー賞)受賞など
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