【広報コラム】パブリックリレーションズを経営に!NO.10「危機管理投資 ~先手を打つリスクマネジメント力で企業価値向上を〜」

目次
こんにちは。本連載コラム「パブリックリレーションズを経営に!」の前半を担当しておりました、企業広報戦略研究所 所長の阪井完二です。新年あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
今号から複数回、パブリックリレーションズの重要テーマである「危機管理」にフォーカスをして書き進めたいと思います。
成長戦略に「危機管理」?
昨年秋に誕生した高市政権では、成長戦略の重要な柱として「危機管理投資」を掲げました。具体的にはAI・半導体、量子、バイオ、宇宙などの経済安全保障分野、次なる感染症危機に備える健康医療安全保障の構築、防災・減災など国土強靭化の推進などについて官民連携で戦略的に投資を進めることで、成長を目指すというものです。
こうした戦略は国民や市場から高い評価を得ており、内閣支持率も株価も高水準を維持しています。
しかし、この「危機管理」と「投資」という二つの言葉が結び付いたこの表現に、少なからず違和感を覚えた方もいらっしゃるのでは無いでしょうか?
一般的に、成長戦略は「攻め」であり、危機管理は「守り」・・・
「危機管理」を旧来的な意味合いで捉えていると、この組み合わせに疑問が生じるのかもしれません。
パブリックリレーションズの3大機能「①インテリジェンス」
危機管理においてもっとも大切なことは、モノゴトの先をできる限り見通して、先手を打つことです。当研究所ではこうした“先を読む力”を、パブリックリレーションズの3大機能の一つ「インテリジェンス(広聴)」として捉えています。
我々、企業広報戦略研究所では“パブリックリレーションズ”とは、
「ステークホルダーの期待と不安を、捉え・伝え・応えることで、将来価値を効率的に高める」ことと定義しています。
分解して細かく解説すると、
① 捉え、=広聴(インテリジェンス)期待や不安を洞察・深掘りし、ファクトを創りだす
② 伝え、=広報(インフォメーション)企業姿勢を社会に発信し、Keyステークホルダーとの関係性を深める
③ 応える=広益(インパクト)社会やKeyステークホルダーの意識と行動の変容をうながす
と設定しています。
パブリックリレーションズの重要テーマである“危機管理”においては、まさに①の「ステークホルダーの期待や不安を捉える力」(広聴・インテリジェンス)が重要になってきます。
この「インテリジェンス」については、本コラムの前号において3大ステークホルダー(インベスター・インターナル・カスタマー)別の企業の活動量について触れていますのでご参照頂ければと思います。
https://www.elnet.co.jp/column/dprcolumn9/
インテリジェンス活動の中でも特に、着目したいのが「不安」です。
ステークホルダーの「期待」を捉えることは想像しやすく、商品企画などマーケティング的には多くの企業で比較的多く行われていることですが、実は「不安」こそが、企業に大きな影響を与えると考えています。
そもそも「不安」とは、世界的な経済環境変化や、政策・規制などポリティクスの変化によるものに加え、日々の仕事や生活の中で、将来の見通しに対する気がかり・心配・やきもきする気持ち、といった事象のことです。
ステークホルダーが企業に対して抱いている「不安」を放置すると、それが「不満」に発展し、さらにはその企業に対する「不信」につながる危険性を秘めています。「不信」にまで至ると、メディアやSNSを通じて不買運動などのネガティブな活動につながる可能性もあり、企業価値にとっては大きなリスクとなります。
3大ステークホルダーの「不安」を捉える
当研究所では、自社を俯瞰して「不安」を早期にキャッチし、マネジメントすることをお勧めしています。
この図は、自社を客観的に評価するインテリジェンスの基本パターンを示したものです。
図の右側、青丸で示した、3大ステークホルダー視点での「不安」の例を挙げてみましょう。
◎インベスター(株主・投資家)目線での不安例
「事件・事故・不祥事の予防策は?」「ガバナンスは健全か?」「アメリカや中国の貿易規制・関税に対応できそうか?」「日本国内の政策・規制への変化への対応力は?」など
◎カスタマー(顧客)目線での不安例
「物価がどんどん高くなっていない?」「海外生産だけど安全性は大丈夫かな?」「口コミでちょっと変な書き込みがあったんだけど・・・」など
◎インターナル(従業員)目線での不安例
「リモートワークがなくなる?」「うちの会社の賃上げは?」「長時間労働規制は?」「ハラスメント対策は?」「この会社で働いていて、将来、自分のキャリアはどうなる?」など
このようなステークホルダーが抱く「不安」を早期に捉え、方針や具体策を練り上げ、いち早く打ち出すことで企業に対する「不安」を「期待」に変化させるチャンスとなるのです。
3大視座から客観的に自社のリスクを先読みする
続いて、図の左側、赤丸で示した「3大視座」についても触れておきます。
① 「グローバル」視座
少子高齢化が加速する日本市場は長期トレンドとしては縮小です。そのため多くの企業がグローバル市場での事業展開を加速させています。一方で、レアアースや半導体など企業に不可欠な物資の調達などは不安定さを増しています。また海外政府による関税政策や環境規制なども日々変化していきます。冒頭に述べた高市政権の「危機管理投資」はこうした経済安全保障を強く意識して投資を加速するとしています。
② 「ポリティクス」視座
企業はあらゆる経済・社会課題政策や規制のなかで活動をしています。そしてそれらの政策や規制は常に変化していくため、自社にとって重要な国々で現在どのような政策が議論されているのか?その変化によって自社にどのような影響が考えられるのか? そうしたことを常に洞察し、働きかけをする仕組みづくりが必須です。
③ 「リスク」視座
これは危機管理そのものです。グローバルな経営環境やポリティクスの変化によって、今後どのような不安や不満がステークホルダーに生じる可能性があるのか? そうしたリスクが自社や競合他社にどのような影響を与えうるのか?しっかりと洞察し、経営陣で共有・議論することが重要です。
危機管理においては、このような3大ステークホルダーと3大視座を掛け合わせ、自社を俯瞰し客観的に先読みする「インテリジェンス力」の強化がカギとなります。
そのためにも、自社や業界を日々客観的に評価・報道しているメディア情報を効率的に収集し、社内共有する仕組みを導入することは、自社の成長戦略としての「危機管理投資」に直結すると考えます。
ELNETのクリッピングサービスは新聞約100紙、雑誌約30誌、WEBニュース約1,000サイトからの収集した記事情報をお届けします。
次号以降では、企業の危機管理活動の実態について、当研究所が実施した企業広報力調査の結果から考察していきたいと思います。
次回もどうぞご期待ください。
※本コラムはELNET外部の筆者が執筆しています。
執筆者プロフィール

阪井 完二
企業広報戦略研究所(電通PRコンサルティング内) 所長
◎専門領域:コーポレートコミュニケーション、企業ブランド、リスクマネジメント、パブリックアフェアーズ、ESG/非財務情報
◎主な著書:「新・戦略思考の広報マネジメント」「戦略思考の魅力度ブランディング」「戦略思考のリスクマネジメント」など
◎受賞/審査員等:2024日本PR大賞審査員、日本PR協会PRアワードグランプリ審査員、マーケティング学会最優秀論文賞(ベストペーパー賞)受賞など
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