【広報コラム】パブリックリレーションズを経営に!NO.6「企業価値向上に向けたPR・広報活動とは?〜「伝える」広報から、「応える」広報へ ~エンゲージメント力~〜」

目次
こんにちは。(株)電通PRコンサルティング 企業広報戦略研究所上席研究員の増田勲です。
第3回から第5回のコラムでは、「企業価値向上に向けたPR・広報活動とは?」と題して、当研究所が開発した「価値づくり広報モデル」について紹介してきました。
今回は、前回ご紹介した「クリエイティブ力」と「PESO活用力」と同じ、Activity領域におけるもうひとつの力、「エンゲージメント力」に焦点を当ててお届けします。
ちなみに、前回までのコラムはこちらをご覧ください。
↓ ↓ ↓ 前回のコラムはこちら ↓ ↓ ↓
第3回:https://www.elnet.co.jp/column/dprcolumn3/
第4回:https://www.elnet.co.jp/column/dprcolumn4/
第5回:https://www.elnet.co.jp/column/dprcolumn5/
「伝える」広報から、「応える」広報へ
ニュースリリースを出す、SNSで発信する、記者対応を行う。こうした日々のPR・広報活動は、企業の情報を社会へ「伝える」ためのものです。しかし、社会やステークホルダーの反応に耳を傾け、その声に「応える」ことはできているでしょうか。
近年、企業のPR・広報に求められる役割は大きく変化しています。企業価値の源泉が「財務情報」だけでなく、信頼や共感といった無形の「非財務情報」にも広がっている今、PR・広報は一方的な発信にとどまらず、ステークホルダーとの良好な関係性を築くことが重要視されています。
それがまさに、「エンゲージメント力」です。
実施率はまだ低いが、今後の鍵を握るエンゲージメント力
当研究所が行った2024年の企業広報力調査では、「エンゲージメント力」は、Activity領域で一番実施率が低い力でした。
また、「エンゲージメント力」に関する10の調査項目を見てみても、全般的に実施率が低く、過半数の企業が実施する項目がないという結果となっています。
専門家が重視する項目を見てみても、1位の「生活者・顧客と対話や共創する機会を設けている」が3割弱程度、2位の「自社の社会的価値のあり方について、重要ステークホルダーと対話している」が2割程度と低水準でした。多くの企業が、エンゲージメントの重要性を理解していながらも、具体的なアクションにまで落とし込めていないという状況が読み取れます。私はこの原因の一つに、企業をとりまくステークホルダーの変化があると考えています。
下のグラフは、重視するステークホルダーを複数回答で聞いた調査結果です。
5割を超えるものだけ挙げてみても、株主や顧客、個人投資家、従業員とその家族、就活生・学生、メディアなど、非常に幅広いステークホルダーを重視していることがわかります。
年々拡大するステークホルダー全てに対応しようとするあまり、企業の戦略や広報として伝えるべきメッセージの対象が曖昧になり、誰に何を伝えたいのかが不明確になっている企業も少なくありません。
「重要ステークホルダーを設定する」ことから始めよう
エンゲージメントを強化するうえでの第一歩は、「誰と信頼関係を築くべきか」を明確にすることです。
たとえば、
- 事業変革を進めているなら、「従業員」との対話
- 上場準備中なら、「投資家」との透明性の高い関係構築
- 社会課題に挑む企業であれば、「地域社会」との協働
といったように、その企業にとっての「重要ステークホルダー」は状況によって異なります。全方位に応えるのではなく、関係を深める相手を意識的に絞ることで、エンゲージメント活動の方向性も明確になります。
エンゲージメント力を高めるポイント
エンゲージメント力を高めるための活動は、単なる発信ではなく、“信頼関係を築く”ことを目的としています。では、どのような活動が信頼を生むのでしょうか。
ポイントは、相手の期待や不安に応えることです。
- 重視するステークホルダーの期待や不安を分析
- PESO等で発信した企業情報に対するステークホルダーの受け止めを洞察
- リアルでの交流や対話する機会を設け、期待や不安に寄り添い続ける
このようなプロセスを通じて、PR・広報活動は単なる「伝達手段」から「信頼構築のエンジン」へと進化していきます。今、企業の広報に求められているのは、情報発信の巧さだけではありません。むしろ、社会やステークホルダーの声にどう向き合うか、そして、どう応えるかが、企業の持続的成長を左右する時代です。
効率的な情報収集と社内共有の仕組みを整え、あなたの会社が重視すべきステークホルダーの期待や不安に、誠実に応えていきましょう。それが、企業と社会をつなぐ信頼をつくり、企業価値を高める礎となるはずです。
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第7回では「広報組織力」に注目し、組織としての広報活動の基盤づくりに迫ります。
次回もどうぞご期待ください。
※本コラムはELNET外部の筆者が執筆しています。
執筆者プロフィール
増田 勲
企業広報戦略研究所(電通PRコンサルティング内) 部長
広告代理店で約14年間、マーケティングコミュニケーション業務全般に携わる。2014年電通パブリックリレーションズ入社。ディレクション職として、飲料メーカー、外資系コーヒーチェーン、精密機器メーカー等を担当し、戦略シナリオの策定や商品・サービスのローンチ時期の戦略PRに従事。
現在は、企業広報戦略研究所で、「企業広報の発展」に寄与すべく、産学連携による調査研究・論文・学会発表等を実践。企業のブランディングや経営広報、KPIの設定、広報効果測定、新モデル開発等の業務を行う。経営管理学修士(MBA)。日本パブリックリレーションズ協会認定PRプランナー。
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