【広報コラム】パブリックリレーションズを経営に!NO.5「企業価値向上に向けたPR・広報活動とは?〜企業のファクトを魅力的に伝える「C+PESO」設計とは?〜」

目次
こんにちは。(株)電通PRコンサルティング 企業広報戦略研究所上席研究員の増田勲です。
第3回のコラムから、「企業価値向上に向けたPR・広報活動とは?」と題して、当研究所が開発した「価値づくり広報モデル」と、そのモデルを用いて調査した「企業広報力調査」のデータをもとに紹介しています。
今回の第5回のコラムでは、その中の「Activity」領域にスポットを当て、企業の魅力を伝える「クリエイティブ力」と「PESO活用力」、そしてそれらを統合する「C+PESO」という考え方についてご紹介します。
ちなみに、前回までのコラムはこちらをご覧ください。
↓ ↓ ↓ 前回のコラムはこちら ↓ ↓ ↓
第3回:https://www.elnet.co.jp/column/dprcolumn3/
第4回:https://www.elnet.co.jp/column/dprcolumn4/
Activity=PR・広報活動の「全て」ではない
もしかしたら、いま、皆さまが、PR・広報の現場で日々取り組まれている多くの業務は、「Activity」領域に該当しているかもしれません。ニュースリリースの作成・配信、メディア対応、SNS投稿、社内報制作など、いわゆる「広く報じる」ための活動が業務の中心となっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
こうした活動は、非常に重要である一方で、「Activity」がPRの全てだと捉えてしまうと、戦略性や一貫性を欠く、“やりっぱなし”の広報になりかねません。
当研究所では、PR・広報活動を「Strategy」「Activity」「Management」の3領域に分けて整理しています(「価値づくり広報モデル」参照)。これらのバランスが取れてこそ、企業の価値向上に資するPR・広報が実現できると考えています。
「PESO活用力」とは何か?
それでは、「Activity」領域について、データを交えつつ深堀していきたいとおもいます。
下記のレーダーチャートは、価値づくり広報モデルを用いて2024年に、上場企業約3,800社の広報担当責任者宛てに調査票を送付し実施した調査結果です。回答いただいた533社のデータを集計したもので、一番外側の青い線が総合点70点以上のS+クラス、以下、S、A、B 、10点未満のCクラスの平均値となっています。ほぼすべてのクラスで最も実施率が高いのが、この「Activity」領域の「PESO活用力」でした。
「PESO活用力」のPESOとは、近年のPR・広報活動で用いられることが増えているワードで、ステークホルダーが接触するメディアを4つに分類し、その頭文字を並べて表現したものです。
・P ペイド(Paid): 購入するメディア
・E アーンド(Earned):獲得するメディア
・S シェアード(Shared):共有されるメディア
・O オウンド(Owned):所有するメディア
この4つの特性を理解し、目的に応じて複合的に活用する力が「PESO活用力」です。
「クリエイティブ力」と「PESO活用力」は一体で考える
企業が何を、誰にどう伝えるか——その設計図を、我々は「C+PESO」(C=クリエイティブ力+PESO活用力)と呼んでいます。この2つは別々ではなく、車の両輪のような関係です。「どんなコンテンツを(C)」と「どう届けるか(PESO)」を同時に設計しなければ、効果的な広報にはなりません。
「クリエイティブ力」と「PESO活用力」の本モデルにおける定義は以下です。
・「クリエイティブ力」:戦略に基づき、企業や商品の魅力を伝えるストーリー策定およびコンテンツ設計を行う能力
・「PESO活用力」:戦略に基づき、複合的にメディアを駆使し、タイムリーかつ継続的に情報発信を行う能力
どちらも、「戦略に基づき」から始まっている通り、「Strategy」領域で策定した戦略に基づいて、コンテンツ設計や情報発信を行っていくことが極めて重要となります。
以下に、現状の、各企業の「クリエイティブ力」および「PESO活用力」に関するそれぞれ10の調査項目の実施率を見ていきます。
「クリエイティブ力」の実施率では、トップが「従業員の信頼・愛着・誇りを高めるコンテンツを設計している」で48.2%、次いで、「株主・投資家の期待や信頼を高めるコンテンツ設計をしている」(48.0%)、「トップのメッセージを広報的視点を持って策定している」(47.8%)、「生活者・顧客の共感や信頼を高めるコンテンツ設計をしている」(43.0%)の順となっています。
従業員、株主・投資家、顧客など、それぞれのステークホルダーに合わせたコンテンツ設計が重視されていることが伺えます。
しかし、専門家がもっとも重視している「広報戦略に基づき、PRメッセージ・ストーリーを策定している」企業は3割程度にとどまりました。これは約7割の企業が戦略に基づかないPR設計になっているとも捉えることができます。全体戦略なきクリエイティブは“やりっぱなし”広報の始まりになりかねませんので注意が必要です。
次に、「PESO活用力」の実施率です。全体的に実施率が高く、トップは「社内報(紙・ウェブ問わず)など、従業員に向けた情報発信をしている」(81.2%)と、8割以上の企業が実施していると回答しています。次いで、「重要メディアの記者リストを整備している」(55.3%)、「メディアの興味・関心をとらえたニュースリリースを、継続的に発信している」(49.9%)、「重要メディアに対し個別にプロモート活動を行っている」(47.5%)の順となっています。
自社にとっての重要メディアを整備し、個別にプロモートを行ったり、そのメディアの興味・関心をとらえた、適切な情報発信を行うためには、日頃から、どのメディアに、どのような情報が露出しているのかを把握・理解しておくことが重要です。
効率よく情勢分析できる仕組みを活用しながら、「C+PESO」の力を養っておきましょう。
企業のファクトを魅力的に伝えるために:「C+PESO」設計の3つのポイント
最後に、「C+PESO」設計を実践的に活用するための3つのポイントを紹介します。
① メディアの特性を理解し、「語る」と「語られる」の両方を設計する
Paid・Owned(自ら“語る”)と、Earned・Shared(第三者に“語られる”)という2つの特性を理解することで、より広がりと深みのあるPR・広報が可能になります。企業が「何を語りたいか」だけでなく、「どう語られたいか」まで設計することが、信頼性のあるコミュニケーションにつながります。
② 「C」と「PESO」は同時に設計する
「どんなコンテンツを(C)」と「どう届けるか(PESO)」は、別々に考えるのではなく、同じタイミングで統合的に設計すべきです。どのステークホルダーに、どう思われたいのか、そして、どんな行動を起こさせたいのかを起点に、「語りたいこと」と「語られたいこと」の両方を想定した設計で、企業のファクトを“魅力的なストーリー”へと昇華させましょう。
③ PR・広報活動は「戦略」あってこそ意味を持つ
PR・広報は「伝えること=広く報じる」活動そのものが目的ではありません。「誰にどう思われたいか?その結果、どう行動して欲しいか?」という戦略視点がなければ活動が分断され、効果が薄れてしまいます。「Activity」はあくまでPR・広報の一つの領域であり「Strategy」領域と組み合わせることで意味が出てきます。さらに上位概念である経営戦略と方向性を合わせることで本来の機能を果たします。
ELNETのクリッピングサービスは新聞約100紙、雑誌約30誌、WEBニュース約1,000サイトからの収集した記事情報をお届けします。
第6回では、Activity領域におけるもうひとつの力、「エンゲージメント力」に焦点を当ててお届けします。企業とステークホルダーとの関係をどう深めるか――そのヒントを探っていきます。次回もどうぞご期待ください。
※本コラムはELNET外部の筆者が執筆しています。
執筆者プロフィール
増田 勲
企業広報戦略研究所(電通PRコンサルティング内) 部長
広告代理店で約14年間、マーケティングコミュニケーション業務全般に携わる。2014年電通パブリックリレーションズ入社。ディレクション職として、飲料メーカー、外資系コーヒーチェーン、精密機器メーカー等を担当し、戦略シナリオの策定や商品・サービスのローンチ時期の戦略PRに従事。
現在は、企業広報戦略研究所で、「企業広報の発展」に寄与すべく、産学連携による調査研究・論文・学会発表等を実践。企業のブランディングや経営広報、KPIの設定、広報効果測定、新モデル開発等の業務を行う。経営管理学修士(MBA)。日本パブリックリレーションズ協会認定PRプランナー。
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