【営業コラム】NO.1「組織的なリサーチ体制と提案品質の向上 ~信頼される営業組織へと進化するためのガイド〜」

目次
新しい連載コラムの初回を担当します、株式会社Goofy代表の八木です。 当社は、SFA/CRMのコンサルティングと営業組織支援を主軸に事業を展開してきました。創業から約8年、さまざまな業界・規模の企業様に対し、営業組織の立ち上げや改善を、システムと現場運用の両面から支援してきました。
そのなかで強く感じているのは、業界やサービスごとにチューニングすべきポイントはある一方で、成果を出す営業組織には共通する“型”や“概念”がある、ということです。 本日は、営業組織づくりの基本となる考え方に加え、これからの時代に欠かせない「組織的なリサーチ体制」と「提案品質の高め方」について、実務の視点を交えながら整理してみたいと思います。
強い営業組織は、気合いではなく“設計”でつくられる
営業組織を立ち上げるとき、まず人を集めることや数字目標を置くことから始めてしまうケースは少なくありません。しかし、本当に強い営業組織とは、単に営業力の高い個人がそろった集団ではなく、担当者が変わっても、競争環境が変わっても、安定して成果を出し続けられる“再現性のある組織”です。 強い営業組織とは「利益を出し続けられる組織」であり、そのためにはミッション、営業プロセス、戦略、改善の流れを段階的に整備する必要があります。
営業組織づくりは、4つのステップで整理する
営業組織の立ち上げは、大きく4つのステップで進めるべきだと考えています。
1. 組織のミッションと目標を定めること
2. 営業プロセスと役割分担を明確にすること
3. 営業戦略とKPI・KGIを設計すること
4. PDCAを回しながら改善し続けること
この流れは非常に本質的です。営業を感覚で動かすのではなく、目的を明確にし、役割を分け、勝ち筋を定め、改善可能な状態にしていく。営業組織を強くするとは、結局のところ「動ける人を増やす」ことではなく、「仕組みとして動く状態をつくる」ことなのだと確信しています。
なぜ今、「組織としてのリサーチ」が必要なのか
ここに、いま多くの企業で加えるべき視点があると感じています。それが「組織としてのリサーチ体制」です。 従来の営業では、優秀な担当者が個人の経験や勘を頼りに提案を組み立てる場面も多くありました。しかし、その状態では提案品質が属人化しやすく、チーム全体の底上げが難しくなります。だからこそ、個人の力量に依存するのではなく、組織として情報を集め、仮説を立て、提案の精度を高める仕組みが必要です。
リサーチが組織に根づくと、営業は単なる“売り込み”から、顧客の意思決定を支援する存在へと変わっていきます。事実やエビデンスに基づいて会話ができるようになれば、顧客からの信頼は劇的に向上します。初回訪問の段階から精度の高い仮説を持てるようになれば、商談の質そのものが進化していくのです。
提案品質を高める鍵は、リサーチの“3層構造”にある
営業組織としてリサーチを仕組み化する際、実務的には「3つの層」で考えると整理しやすくなります。
〇第1層:マクロ分析
PEST分析に代表される、政治・経済・社会・技術の変化を把握し、顧客を取り巻く外部環境を理解する視点です。市場全体の変化を知らずに提案しても、顧客の危機感や優先順位とは噛み合いません。
〇第2層:顧客分析
中期経営計画、IR資料、ニュースリリース、役員メッセージなどを読み込み、その企業がどこへ向かおうとしているのか、何を重要課題としているのかを把握します。ここを外すと、提案は表面的な内容に留まってしまいます。
〇第3層:現場分析
競合他社の動きや、業界特有の商習慣、現場が抱えている悩みや摩擦を捉える視点です。経営課題だけでなく、現場の具体的な困りごとまで押さえられると、提案は一気に具体性を帯びます。
この3層を押さえることで、営業は「話を聞きに行く人」から、「仮説を持って解決策を提示しに行く人」へと変わります。
営業プロセスの整備は、“誰がやっても一定品質”を保つためにある
次にプロセスです。営業プロセスとは、「誰が、いつ、どのような業務を、どれくらい行うのか」を設計した活動の流れです。初回アプローチから受注までを細かく整理し、役割分担を明確にすることで、対応の漏れや重複を防ぎ、強固な体制が構築されます。
この考え方は、提案品質の平準化にも直結します。 たとえば、訪問前の確認項目を標準化し、チェックリストとして運用するだけでも準備の質は変わります。「業界動向」「経営方針」「競合状況」「現場課題」「提案仮説」。こうした論点を共通化しておけば、個人のスキル差を組織として補完しやすくなります。属人的な営業を脱するには、こうした「標準化」が極めて重要です。
仕組み化の第一歩は、情報収集を個人任せにしないこと
具体的にどう仕組み化すればよいのか。まず着手すべきは「リサーチ項目の標準化」です。バラバラな視点で調べていては質が安定しません。最低限押さえるべき観点を共通のチェックリストに落とし込み、準備の基準をそろえます。
次に「情報収集手段の整備」です。 e-Stat、業界紙、IR資料など、活用すべき情報源を定めておくことで、収集の速さと深さを標準化できます。 さらに「ナレッジシェアの習慣化」も欠かせません。受注・失注を問わず、「なぜその結果になったのか」を振り返り共有する場をつくる。これを繰り返すことで、成功も失敗も組織の資産となり、学習し続ける組織へと進化します。
営業戦略は、“どこで勝つか”という根拠ある選択
営業戦略の設計では、自社と競合の分析に基づき、勝てる市場や手法を定めることが重要です。最終目標(KGI)と中間指標(KPI)を設定し、それを日次の計画にまで落とし込みます。
ここでも、リサーチ体制が成否を分けます。十分な情報がなければ、戦略は希望的観測になりがちです。3層のリサーチが機能していれば、「どの企業に、どんな仮説で、どのタイミングで提案すべきか」という戦略が、根拠ある具体的なものになります。
THE MODELとABMの視点は、プロセスを一段引き上げる
プロセスをさらに高度化するには、THE MODELやABM(アカウント・ベースド・マーケティング)の視点が有効です。 部門間の連携が弱い組織では、せっかくの仮説が分断されがちですが、情報を部門横断で共有できれば、一貫した価値提供が可能になります。 特にABMでは、重要顧客に対して深く刺さる提案が求められます。仮説なき訪問をなくし、常に顧客への示唆(インサイト)を持って会話できる状態をつくること。これが、これからの営業組織に求められるスタンダードです。
PDCAと情報共有が、組織を“育てる”
強い営業組織とは、単に優秀な人がいる組織ではなく、学びが循環する組織です。 現場で得た知見を個人の経験で終わらせず、チームで共有し、型として磨いていく。そのサイクルが回ることで、営業の再現性は高まり、提案品質も組織全体で向上していきます。
信頼される営業組織は、“準備の質”が違う
営業組織づくりとは、単に人を増やしたり、数字を追いかけたりすることではありません。 ミッションを定め、役割を明確にし、戦略を持ち、改善できる仕組みを整えること。そしてその土台の上に、組織的なリサーチ体制を築き、提案品質を底上げしていくことです。
営業が場当たり的な訪問から脱し、常に顧客に対する示唆を持って対話できるようになったとき、その組織は「売る組織」から「信頼されるパートナー」へと進化します。 属人的な頑張りに頼るのではなく、組織として勝てる仕組みをつくること。それが、これからの時代を勝ち抜くための唯一の道であると信じています。
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本連載コラムでは、営業担当者や営業マネージャーの皆さんにとって、日々の現場で役立つ視点や考え方をお届けしてまいります。
次回以降のコラムにも、ぜひご期待ください。
※本コラムはELNET外部の筆者が執筆しています。
執筆者プロフィール

八木 光(ヤギ ヒカル)
株式会社Goofy 代表取締役
立教大学卒業後、人材業界(Recruiteグループ、マイナビグループ)でキャリアをスタート。その後、経営コンサルティングや事業承継支援を経験したのちに、2021年に株式会社Goofyに取締役としてジョイン。2024年にはリブコンサルティンググループ(東証グロース上場)へ参画し、PMI業務に従事。GoofyではSFAコンサルティング事業/営業コンサルティング事業を立ち上げを行い、述べ200社以上の企業の営業組織設計/営業DX支援を行っている。2026年1月に同社代表へ就任。現在は「本当に成果の出るシステム/組織改善支援」を志し、自身も現場での顧客支援に奔走している。
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