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【広報コラム】インベスター向けPRとは? 〜“企業価値”を共創するコミュニケーションへ〜

こんにちは。企業広報戦略研究所の上席研究員、増田勲です。
2026年に入ってからの第10回~12回では、パブリックリレーションズの重要テーマである「危機管理」にフォーカスをして解説してまいりました。

この「危機管理」もそうなのですが、本連載では、「パブリックリレーションズを経営に!」というテーマのもと、企業価値向上に資するPR・広報活動のあり方を多角的に解説しています。

今回の第13回のテーマは「インベスター向けPR」です。株主・投資家との関係性をどのように築き、企業価値を高めていくのか。パブリックリレーションズの観点から考えていきます。
ちなみに、これまでのコラムについてはこちらをご覧ください。 
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↓↓↓ これまでのコラムはこちら ↓↓↓
第8回:企業価値向上に向けたPR・広報活動とは?〜企業の中長期戦略を読み解く〜
第9回:企業価値向上に向けたPR・広報活動とは?〜経営を動かす広報へ─求められる『インテリジェンス』機能とは?~
第10回:危機管理投資 ~先手を打つリスクマネジメント力で企業価値向上を〜
第11回:危機管理投資 ~他社はどのくらいインテリジェンス活動している?〜
第12回:危機管理投資 ~リスクって“テイク”していいの?〜
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なぜ今、インベスター向けPRが重要なのか?

企業を取り巻くステークホルダーの中でも、「インベスター(株主・投資家)」は極めて重要な存在です。当研究所が定期的に上場企業を対象に調査を続けている「企業広報力調査」の結果でも、最も数値が高いのは「株主」となっています。また、2024年調査から新たに加えた「個人投資家」と「機関投資家」ですが、どちらも75%を超える高い数値となりました。

企業にとって彼らは単なる資金提供者ではなく、企業の将来価値に期待を託してもらったパートナーです。そして近年、その重要性はさらに高まっています。背景の一つが、個人投資家の増加です。新NISAなどの制度改革も追い風となり、個人投資家は量的にも影響力の面でも拡大しています。

さらに東京証券取引所による「資本コストや株価を意識した経営」の要請などにより、企業はこれまで以上に市場からの評価を意識せざるを得なくなっています。

つまり、企業価値は「市場との対話」によって決まる時代に入っています。


投資家は何を見ているのか?

では、投資家は何を評価しているのでしょうか。従来は売上や利益といった「財務情報」が中心でした。しかし現在は、人的資本や社会・関係資本などの「非財務情報」も重視されています。なぜなら、企業の成長性は過去の実績ではなく、「将来への期待」によって評価されるからです。例えば、
・どのような人材戦略を持っているのか
・社会課題にどう向き合っているのか
・ステークホルダーとの関係性は健全か
こうした要素が、企業の将来価値を左右します。
そして重要なのは、これらは「開示するだけでは伝わらない」という点です。

インベスター向けPRは、“情報開示”から“関係構築”へ

従来のインベスター向けPRは、「情報開示」が中心でした。決算説明資料や有価証券報告書など、正確な情報をタイムリーに提供することが主目的です。しかし、これだけでは十分ではありません。なぜなら投資家は、単なる情報ではなく、「企業の意思」や「将来への成長ストーリー」を求めているからです。

ここで重要になるのが、パブリックリレーションズの視点です。当研究所では、“パブリックリレーションズを経営に!”という想いから、「PR式経営」と題した書籍を2026年に上梓いたしました。その「PR式経営」では、
・広聴:インテリジェンス 
・広報:インフォメーション 
・広益:インパクト
の3つの機能を循環させることの重要性を説いています。インベスター向けPRも例外ではありません。

ここで、当研究所が実施した「企業広報力調査」のデータを見てみたいと思います。

このグラフは、株主や投資家といった「インベスターに対する広報活動」を、先の3つの機能(広聴・広報・広益)に分類して、それぞれの活動の実施率を表しています。PR・広報力の高い企業群(Sクラス以上)とそうでない企業(Bクラス)とでは、大きな差が生じていることがわかるかと思います。

中でも、Sクラス以上の7割以上が実施していて、Bクラスとの差が40pt以上も開いている「広聴:インテリジェンス」「広報:インフォメーション」については、まず、優先して実施しておきたい活動であると考えます。

インベスター向けPRのポイント

① 投資家の「期待と不安」を捉える(広聴:インテリジェンス)

まず重要なのは、投資家の視点を理解することです。中でもとりわけ、「個人投資家」の視点を理解することが今後のポイントになるのではないかと考えています。「機関投資家」との対話は多くの企業がこれまでに実績を積んできたかと思いますが、急激に台頭してきて、現在延べ8,000万人を超える「個人投資家」にはどの部署が専門的に対応するのかも決まっていないほどエアポケットに落ちている可能性があります。

しかし、先に挙げた「ステークホルダー・ターゲットの変化」でも見て取れるように、「機関投資家」よりも「個人投資家」のほうが重視する率が僅かに高い結果になるほど重要度が高い存在となっています。「個人投資家」が自社の何を認知し、何に期待を抱いているのか?また、何を不安視しているのか? こうしたことを様々な手法で広聴し、分析する「広聴:インテリジェンス」が起点となるでしょう。 

「広聴:インテリジェンス」で重要なのは、スピーディに、鮮度の高い情報を収集・分析することです。ELNETのサービスを活用するなどで自社のインテリジェンス機能を強化することが望ましいと考えます。

例えば、個人投資家や市場関係者が、自社について、どのような文脈で語っているのか、どの経営テーマが注目されているのか、どのような懸念が生じているのか、こうした声は、決算説明会や公式IR資料の中には表れにくく、ニュース記事やWEBメディアなどの情報に分散しています

ELNETが提供する新聞・WEB情報の横断的な収集サービスを活用することで、これらの情報を網羅的かつ時系列で把握し、投資家の「関心の変化」や「論点の兆し」を早期に捉えることが可能になります。

② 財務・非財務を統合した「一貫したストーリー」(広報:インフォメーション)

次に重要なのは、「何をどう伝えるか」です。プロの機関投資家ではなく、素人も多く含まれる個人投資家に向けた情報は、単なるデータの羅列では意味を持ちません。重要なのは、ファクトをもとにした一貫したストーリーです。

例えば、「人的資本への投資」→「従業員の成長」→「競争力の向上」→「中長期の収益性向上」・・・このように、非財務情報と財務成果をつなぐ成長ストーリーが必要です。

ここで重要な視点がもう一つあります。それは、企業の成長ストーリーを「頭に描かせることができるかどうか」です。

インベスター向けPRの目的は、単に情報を「正しく理解させること」ではありません。企業の未来や成長の道筋を、投資家の「頭の中に描かせること」です。人は、断片的な情報ではなく、「ストーリー」として認識できたときに、初めて全体像を理解します。そして、そのストーリーが腑に落ちたとき、「この企業は伸びる」「この企業を応援したい」という確信へと変わります。

したがって、インベスターPRの本質は、財務情報と非財務情報をバラバラに伝えるのではなく、それらをつなぎ、一貫した成長ストーリーとして提示することにあります。そして、そのストーリーを“頭に描かせること”ができて初めて、腑に落ちる状態に導けるのです。

“応援される企業”になろう

当研究所では、以前に「投資をしたくなる個人投資家の心理とは?」ということを分析したことがあります。企業への「投資」に最も影響を与える「個人投資家の心理」というものを重回帰分析した結果、企業への『投資』に最も影響を与えるのは『応援』したい気持ちになる」ということがわかりました。
個人投資家の心理と投資の関係性
「必要だと思われる」よりも、「役立つ」よりも、「信頼」よりも高い数値というのは、非常に示唆に富む結果です。投資家に「株を購入してもらう」、つまり「選ばれる存在」になるためには、まず「応援される企業」になることが大切なのです。

ンベスター向けPRとは、単なる情報開示ではなく、企業価値を共創するための対話活動です。その本質は、
・投資家の期待と不安を捉え(広聴:インテリジェンス) 、
・財務・非財務を統合した成長ストーリーを描き(広報:インフォメーション)、
・理解と納得を通じて「応援したい」という気持ちを獲得する
ことにあります。企業価値は「伝えた内容」でなく、「伝わり、信じられた内容」によって決まります。だからこそ、インベスター向けPRは、経営そのものに深く関わる重要な活動と言えるでしょう。

情報開示にとどまらず、経営の根幹である「自社のストーリーづくり」に踏み込むこと。それこそが、これからのインベスター向けPRに求められる役割です。

次回もどうぞ、ご期待ください。

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次回もどうぞご期待ください。

※本コラムはELNET外部の筆者が執筆しています。

執筆者プロフィール


増田 勲
企業広報戦略研究所(電通PRコンサルティング内) 部長
広告代理店で約14年間、マーケティングコミュニケーション業務全般に携わる。2014年電通パブリックリレーションズ入社。ディレクション職として、飲料メーカー、外資系コーヒーチェーン、精密機器メーカー等を担当し、戦略シナリオの策定や商品・サービスのローンチ時期の戦略PRに従事。
現在は、企業広報戦略研究所で、「企業広報の発展」に寄与すべく、産学連携による調査研究・論文・学会発表等を実践。企業のブランディングや経営広報、KPIの設定、広報効果測定、新モデル開発等の業務を行う。経営管理学修士(MBA)。日本パブリックリレーションズ協会認定PRプランナー。


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