新聞記事を無断でクリッピングして社内イントラネットで利用した賠償額は?
Summary 概要
A社が新聞記事を画像データ化し、社内イントラネット上に従業員等が閲覧できるようにアップロードしていました。
B新聞社は記事の著作権(複製権及び公衆送信権)を侵害したとして、A社に対し損害賠償を請求しました。
Judgment 判決
一審の東京地裁は、A社による著作権侵害を認めて損害賠償を命じましたが、AB双方が知財高裁に控訴しました。
知財高裁は、A社のイントラネットに掲載された記事数は1266件(一審では829件)、記事1件当たりの賠償額は5000円(一審と同じ)と認定しました。
これにより、賠償額は弁護士費用を含め696万円(一審495万5000円)となりました。
A社は、新聞記事について「事実の伝達に過ぎない雑報及び時事の報道であって、著作物性はない」「単なる表現の工夫があることで著作物性が認められるわけではない」などと主張しましたが、退けられました。
Point ポイント
「新聞記事の著作物性」が争点となった裁判です。
判決は「記者の何らかの創造性が顕れており、著作物であると認められる」(控訴審)と結論づけました。
また、著作物として認められるには「高度な芸術性や独創性まで要するものではなく、作成者の何らかの個性が発揮されていれば足りる」(一審)としています。
賠償額については、個別の著作権侵害の状況によって判断されますので、どんな場合でも1件5000円となるわけではありません。
Reference 参考
・令和5年6月8日 知的財産高等裁判所 令和5年(ネ)第10008号 損害賠償請求控訴事件
(原審・東京地方裁判所令和2年(ワ)第12348号)
・駒沢公園行政書士事務所日記メルマガ 参照