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著作権Q&A

File 05 検討過程の落とし穴

月並商事には、3か月に1回、全国紙5紙に全面広告を出す予算がある。広報課には、その広告のアイデアが常に要求される。 「東北のローカル鉄道とタイアップした『古里リニューアル計画』が評判いいですよ。旅行雑誌にカラー写真付きで大きく出ました。その誌面をそのまま取り込んで、周りに月並商事が込めた思いをさりげなくちりばめたらどうでしょう」。ミーティングで広報課主任・飯江留美子(29)が熱弁をふるう。
「いいかもしれんなあ。その雑誌、見せてくれよ」と課長。「そう言われると思って、課のメンバー分の5枚、カラーコピーしてきました」「あれ、コピーの許諾は取ったんだろうな」「課長、遅れてますねえ。
2013年の著作権法改正で、著作物利用の検討の過程ではその著作物を利用できる、となったんですよ。30条の3に書いてあります」。一夜漬けの知識であることは隠して、飯江が胸を張った。
雑誌記事を使った広告の企画は通り、あとは役員会での承認だけとなったが、そこである役員から異論が出た。「もっと売れている週刊誌でも大きく出たじゃないか。ネームバリューを考えれば、そっちを使うべきだ」。
二つの記事は、大きさ、写真の美しさとも同等。「あとは好みの問題か。社員の投票で決めますか」という広報担当役員の提案が通った。
A3用紙の左右に二つの記事のコピーを並べ、いいと思う方に○をつける。そんな投票用紙を飯江が作った。東京本社の社員約1200人分をコピーして各部署へ配布した。TwitterやFacebookでも、何人もの社員がこの話題を投稿した。投票結果は、最初の提案の旅行雑誌が僅差で選ばれた。
「いい仕事できたわ」。満足そうな飯江に、大きなカゲが忍び寄っていた。

何をしくじったかというと

広告に誌面を使わせてもらう出版社との交渉には、飯江が出向いた。
「最近、あの誌面がSNSでよく取り上げられているようなので、なんでだろうと思っていたんですが、そういうわけですか」。雑誌編集長の表情が硬い。「はい、1200部もコピーして投票用紙を作って。結構大変でした」と飯江。
「検討過程の利用はOKといっても、著作権法には、こうも書いてありますよ」と雑誌社の法務担当者が、条文を示す。「著作権者の利益を不当に害することとなる場合はこの限りでない」という部分に、飯江の目が吸いつけられた。
「大量コピーの上に、SNSでも相当拡散されるなど、雑誌を買って読んでもらう機会がかなり失われた、とも考えられます。そのような管理の甘いところには、誌面を広告に使ってもらうわけにはいかないでしょう。それどころか、損害として考えねばならないかもしれませんよ」。

解説:検討過程の著作物利用には、守るべきルールがあります

著作物の利用形態の多様化が進む中で、利用制限規定も変化しています。「背景にたまたま絵画が写り込んだ場合の写真利用」「許可を得るための検討過程での利用」などが認められるようになりました。課など小さな単位での企画会議用に、著作物を複製しても問題にはならないでしょう。
ただし、大量の複製や公衆送信などを伴ってしまうと、著作権者の当然得るべき利益を不当に害することになってしまいますので、避けなければなりません。
また、TwitterやFacebookなどのSNSには、別の意味でも注意点があります。社員やアルバイトから、SNS投稿によって社内情報が拡散されたり、食品関係の店でふざけて撮った不衛生な写真がネット炎上を呼んだり、という例が後を絶ちません。ネットのリスクを見据えて社員教育を行う時代になってきました。

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